山菜類の栽培技術

 

(1)ギョウジャニ ンニクの促成栽培法
1 背景・目的
ギョウジャニンニクは露地物が3月初旬から出荷され初期は高価格で販売されるが、ピーク時には半値程度に下落する。今後、栽培化による産地化を図るため市場分析に基づき、生産拡大が期待できる促成栽培技術を検討する。
2 技術のポイント
(1)金沢市場において、入荷量の少ない2月上旬~3月上旬に前進出荷しても価格の低下は少なく、促成栽培による収益の増加が期待できる(図1)。
(2)12月中旬からの加温栽培では1月下旬に収穫でき、無加温ハウスのトンネル栽培を組み合わせると露地物の収穫が始まる3月上旬まで継続して収穫できる(図2)。
(3)鱗茎を約800球/㎡伏せ込むと800g収穫できる。さらに、軟白栽培で鱗茎部を共に収穫すると約1.3㎏、従来の地上部だけの収穫に比べ約160%の収量が得られる(図3)。
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3 成果の活用と留意点
(1)ギョウジャニンニクは種子で大量に繁殖できるが、収穫開始までに4~5年を要するため、計画的に根株を養成する必要がある。
(2) ハウスでは育苗箱に伏せ込み、搬入して栽培するとハウス利用効率が高まる。

(2)山ウドの種子繁殖による促成栽培法

1 背景・目的
奥能登の山ウドは県外産に比べ出荷時期が遅く、価格の低下する4~5月に出荷される。今後、産地化を進めるため高価格が期待できる促成栽培方法を検討するとともに、種子繁殖により栽培した山ウドの商品性を調査する。
2 技術のポイント
(1)前年の秋に採集した種子を3月に播種し、6月に苗を定植して栽培すると、翌年、1株から4、5本の新芽が収穫できる(図1)。
(2)養成した根株を1月中旬から加温栽培すると、2月中下旬に収穫でき、加温時期をずらすことにより4月上旬まで継続して出荷できる(図1、2)。
(3)この栽培ウドは市場から、栽培品種と比べ①軟白部は短いが山ウドらしく県外産と差別化ができる、②天ぷら用として葉付きの方が良い、などこれまでの山採りのものと同等であるとの評価を得た。
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3 成果の活用と留意点
(1)葉付きウドはGABA含量が多い他、抗酸化能、抗アレルギー性など機能性があり、健康食品としてもPRできる。
(2)採集した種子は、実をつぶして湿り気のある土と混合する、洗浄して種子だけを選り分けポリ袋等に密封して冷蔵庫で保管するなど、乾燥させないで貯蔵する。

(3)“紫ワラビ”の選抜と増殖方法

① 優良系統の選抜
1 背景・目的
市場において、「ムラサキワラビ」が高く評価されているが、能登で自然収穫されるワラビは緑や紫色のものが混在しており品質の不揃いが指摘されている。
今後、ワラビの栽培化を進めるため能登の自生地から採集した株の中から、紫色が濃く収量性の高い優良系統を選抜する。
2 技術のポイント
(1)選抜した「穴水H」系統は葉柄が濃い紫色で、アオワラビとは明確に区別できる(図1、表)。
(2)「穴水H」は調査した8系統の中では、1茎重は中程度であるが、発生本数が多く収量性が高い(図1)。
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3 成果の活用と留意点
(1)葉柄の紫色は葉が展開する頃には緑色に変わる。
(2)遮根シートを利用した隔離栽培で簡易に増殖できる。

(3)“紫ワラビ”の選抜と増殖方法

② 遮根シートを利用した増殖方法
1 背景・目的
ワラビの増殖は地下茎を株分けして行うが、地下茎は土中約20㎝に分布し分岐、交差しながら生育しているため特定の株を多数採集するのは困難である。そこで、優良形質ワラビの栽培化に向け簡易な増殖法を検討する。
2 技術のポイント
(1)遮根シートを敷いた上に培土を盛り、優良ワラビの親株を植付ける(図1)。
(2)1ヵ月後、伸び出た地下茎を遮根シート内に誘導する(図2)。
(3)シート内に堆肥を30%ほど混合した土を約20㎝詰め、両サイドをトロ箱等でU字型に固定する(図3)。
(4)親株を中心に落ち葉等を被覆、施肥、潅水すると地下茎が伸長する(図4)。
(5)伸長した根株は土が崩れないようヒモで括り、シートと共に35㎝ほどに分割すると活着しやすい土付きの苗株が得られる(図5)。
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3 成果の活用と留意点
(1)ワラビは酸性土壌が適するため培土はpH5.5前後とし、施肥量は土50L当たり硫安20gほどを混合する。
(2)地下茎がスムースに伸長するようU字の底面は平らにし、シートは弛まないように敷く。
【参照先不明】