ギョウジャニンニク_前書き

 

— はじめに —

 早春、雪解けとともに元気よく太い葉鞘茎が芽生えてくるギョウジャニンニクは、北国を象徴する植物といえる。ギョウジャニンニクは食味が良く山菜の王様的存在である。従来から“行者ニンニク”といわれ、深山で修行する僧の体力増強食材として知られていた。一般に疲労回復、精力向上など滋養強壮効果が広く知られている。

 ギョウジャニンニクは、食品としての成分や、機能性成分が明らかになるにつれ、需要も確実に上昇しているが、生産量は逆に減少傾向にある。現在のところ、ギョウジャニンニクの生産は自然物に依存している。

 ギョウジャニンニクは食味に優れ、しかも機能性に富むなど多くの特性を有し、野菜としてのほか加工食品や健康食品として需要は拡大しつつある。そのため、いつまでも生産量や生産期間に限界のある天然物に頼っていては、需要を満たすことはできない。需要増を自然物に依存するような安易な考えは、野生植物の資源枯渇につながるものと考えられる。とくに、ギョウジャニンニクの生育は緩慢であり、自然条件における増殖力はきわめて低い植物であるということを理解してほしいものである。

 需要に対応した生産が行なえるように、一日も早く生産体制を確立し、安定した生産供給を行ない、潜在需要をも掘り起こすことが重要と考えられる。ギョウジャニンニクの生産では、大規模生産を目標とする場合はもちろん、趣味的栽培、小規模生産においても、生育特性ばかりでなく、生産特性を習得し、生産効率の高い栽培方法を実践することが重要である。栽培を開始したのち、状況の変化により、趣味的栽培から小規模生産へ、あるいは小規模生産から大規模生産へ移行する場合もある。そうなっても対応できるよう、規模に関係なく、はじめから栽培手順を逸脱しないように心がけることが必要である。

 ギョウジャニンニクは、生育が緩慢であり、種子から育て、野菜(山菜)として利用するには5~6年、または7~8年かかるといわれるように、生育サイクルが非常に長いのが特徴である。しかも、根株からの増殖率は低く、成熟株の茎葉を収穫して根株を残した場合の再生においても3~4年程度はかかる。

 種子、分げつにより増殖できるが、種子の生産量は少なく、分げつによる増加もわずかである。しかし、根にできる不定芽を増殖に利用できる。この第三の増殖方法を最大限に活用したいものである。

 栽培の基本は、ギョウジャニンニクの特性を知り、現在までに開発された技術を有効に活用することである。いずれにしても、ギョウジャニンニクの栽培のポイントは、どのようにすれば効率よく増殖できるのかにつきる。そういう意味で「種子の確保」「実生栽培前半の育苗管理(播種後三年間の管理)」「根株養成期の管理」「軟白茎生産」が一体となって、はじめて効率のよいギョウジャニンニクの生産が可能になる。

 ギョウジャニンニクの生産における最大の特徴は、根株養成期と軟白茎生産期に分かれていることである。根株養成期間は生育段階により異なるが、育苗期間を除くと1~3年必要となる。一方、軟白茎生産は、貯蔵根株の加温によって20日目前後から収穫でき、収穫期間は10日ほどである。したがって、ギョウジャニンニクは、貯蔵根株の使用により計画生産が可能になる。北海道の道北、道東の冬期は寒冷であり、この寒さを活用して根株を長期にわたり貯蔵できるとすれば、軟白茎は季節に関係なく自由に生産が可能になる。

 このように栽培技術は確立されつつあるが、残された課題も多くみられる。とくに、定植、収穫、ならびに伏込みなどの作業の機械化である。これらの課題は、栽培面積の拡大がともなわなければ解決できないものと考えられる。そのためにも、需要を拡大し、栽培面積を増加させて、新しい栽培作物として育てたいものである。

 本書が多くの方に活用していただけるとともに、ギョウジャニンニクの栽培の広がりと安定化に役立てていただければ、著者として望外の喜びである。
【参照先不明】