「無肥料栽培」
植物は、光合成などの同化作用によって生まれた物質の一部を、根の表皮細胞から高分子の有機物(ムシゲル)として放出している。このムシゲルはC/N比が高く、チッソ固定菌や菌根菌などの活動を促進している。これらの微生物が外界から集めてくるチッソやリン酸などの量ははかりしれない。
また、意外に多いのが根の脱落細胞。地中には、作物自身がどんどん根を張らし、新陳代謝して細胞を脱落させる。ときには枯死した残根という形でも地中に有機物を供給する。これらはムシゲルとは逆にC/N比が低いため、タンパク質分解微生物が根圏を取り巻いて活性化し、その働きに伴って多量のアンモニアを生成させている。
このように、根が分泌した有機物は、新しい物質へと変化し、根に再吸収されていく。植物は自らが生き繁栄するために、周りの土壌と微生物を根の働きによって豊かにし、そこから自らが生長する糧(肥料)を得るという、まさに自作自演で生長するような仕組みを持っている。
ここで注目すべき点は、このような作物の自作自演現象が、施肥条件下では著しく劣ることである。無施肥条件で土壌中の残留肥料がなくなったときほど、チッソ固定菌、リン酸吸収を助ける菌根菌などは増殖をはじめ、菌体肥料として直接作物を助ける力となるのである。
これらの微生物の働き、また降雨や地下水に含まれる肥料分、そして地力チッソの放出……など、無肥料栽培のチッソ源はもう少し挙げられるかもしれない。だが、それら天然供給のチッソ量を「過大評価」したとしても、やはり、無施肥条件下で長期にわたり作物が一般栽培に劣らないほどの収穫できるという理由を、今現在の農学の範疇では十分説明できない。
現在の施肥農業は、植物を生育させる栄養素はチッソ・リン酸・カリのほかに一六種の必須微量元素が必要で、植物の生産量は最も不足する無機成分量に支配されるという「最小養分律」の概念が基本になっている。したがって、不足成分をバランスよく補うことが大切になる。しかし無肥料栽培の場合、不足成分を人為的に補うことはない。植物は必要不可欠な成分をどのように得ているのであろうか。
その答えとなる説のひとつに「元素転換」がありそうだ。一般の化学では異端視されている説だが、量子力学の見地からすると、その正当性が成り立ってくるそうである。
元素転換は常温核融合と同じく、ごくわずかなエネルギーでも起こり得るといわれている。そのエネルギーのもとになっているのが、植物と人間が共通してもつ微弱な生体電流だともいわれ、特に人が放つ生体電流は作物の生長に大きく影響を与えているのだそうだ。
簡単にいえば、農家の体や心の状態までもが作物に影響する。つまり農家が愛情をもって作物に接し世話をする、その心の声(こえ)こそが、見えない肥(こえ)になっているのかもしれない。
本誌三月号で紹介された旧暦を応用した農業も、宇宙規模の生体電流(月の場合は引力)の影響だと解釈すれば説明ができよう。このようなエネルギーは、すぐさますべての農地で作用するとはいえないだろうが、条件さえ整えば、無尽蔵に供給されるらしい。
無肥料栽培に移行するには これまで普通に肥料や農薬を使って農業をやっていた人が無肥料栽培に転換した場合、すぐに安定的な収穫を得られるということはまずない。土壌が無肥料栽培にかなうように変化し、生産量が安定するまでには三年から五年ほどかかるといわれている。
ひとつには、土壌中に含まれる残留肥料と未分解有機物をできるだけ早く除去浄化させることである。長期的にみた無肥料栽培の収量の推移は、その残留肥料が抜けるまでの期間は減収するが、抜けきったある時点からみるみる収量が増収へ転ずる傾向がある。ある時点から土壌の何かが変わるのである。
残留肥料が化学肥料主体の場合は溶出が早く残留性が低いため、数年のうちに土壌が変化する。しかし有機肥料の場合は土壌粒子との結合が強く、溶出と分解も緩慢で残留肥料(肥毒)が抜けるのが遅いため、土壌の変化には長年を要する傾向にある。
たとえば水はけの悪いところは改良し、畑地で耕盤層がある場合はそれを解消する。また、作物ごとに合った栽培体系をさらに研究し、好適な栽培環境づくりに努めることが大切である。この点は農業の基本であるが、一般には施肥という外力によって、そのような内的環境要因の優劣が見えにくくなっているのも事実であろう。
無肥料栽培で尊重するのは、施肥概念の最小養分律ではなく、作物のもつ力を最大限に発揮させられるための「最小環境律」の向上である。ちなみに、現在の作物品種は多肥要求性のものが多いことから、それとは逆の無施肥条件に十分適うような品種があれば理想的である。それには農家による自家採種が最もよい。
無肥料栽培の作物は、施肥によって生じる物質的な過剰がないため、病虫害が極めて少なくなる。これは、自然の原野山林がそうであることにも共通している。
【儲かる農業から、喜ばれる農業へ】
実施農家は、「転換後数年は不安定だったけれども、品質も格段によくなってゆくことが実感できる。」「よいもの、美味しいものができて、なによりもお客さまから、喜びの声が寄せられるようになって、農業にやりがでてきました」などと、皆共通して口にし始める。
あわせて極端な天候の変化や生理障害に影響されない強靭な作物が育つ状態となり、そこから収穫される農産物は中国漢方医学で言われる「上薬」以上の働きをもつような力強い農産物が収穫できる。
無肥料栽培に固執し、すぐさま実施することは難しいとしても、現在の過剰施肥がもたらしている様々な土壌障害を今一度見つめなおし、今まで気付かなかった、はかりしれない大自然と土の偉力を見出すべき時期が来ているのではないだろうか・・・。
無肥料栽培はその新しい可能性を感じさせる。
出典:無肥料自然栽培

