出典:知的財産いいねっと
昭和23年、山形市蔵王成沢の農家に、中川村中山地区(現上山市)から嫁いだ娘が「食べ物に困ったときに食べるように」と種子を もってきたのが蔵王かぼちゃ栽培の始まりといわれており、栽培の歴史はまもなく70年になります。
蔵王地区は昼夜の気温差が大きく、おいしいかぼちゃができることから、昔からかぼちゃ栽培が盛んな土地でした。いまでは蔵王地区 全体に広がり、蔵王かぼちゃの産地が形成されました。
蔵王かぼちゃは、青磁色で底の部分に約10センチ程の大きな「へそ」があるのが特徴です。また、マサカリやナタを使わないと切れないほど 硬いため、別名「マサカリかぼちゃ」とも呼ばれています。しかし、皮が硬いために保存性に優れている面もあり、9月下旬から収穫された後、 一定の保存期間を経ることで追熟され、年明けくらいまでは十分おいしく食べることができるようのが最大の特徴です。
現在では、地域の伝統野菜として確固たる地域を築くようになりましたが、もともとは生産者が自家採種により種子を更新してきたこともあり、 生育や品質にバラつきが生じる欠点があります。中には、他品種との交配が原因で栽培が廃れてしまったところもありました。かぼちゃは 自然交配しやすいため品種を保持するのが大変なのです。そのため、県・農協・地元種苗会社が連携し、蔵王かぼちゃ本来の品質や食味を均一化 するための努力が続けられています。
山形県では伝統野菜を展開する中で「地域内需要に対応し、県内での認知度を高めていく品目」として蔵王かぼちゃを位置付けています。 そこで、この地域に根ざした伝統野菜を大切にして、ブランド化していこうという考えに沿う形で、地域団体商標の取得を目指し登録されました。
蔵王かぼちゃは現在、蔵王掘田地区の生産者が中心になって生産されています。以前は20名程いた生産者もその半数程に減少してきており、 品質食味とともに生産量の維持も課題となっています。栽培面積は1.5ヘクタールで生産量は2トン程度(平成28年)ということで、なかなか 県外まで出回りません。しかし、地域住民の食生活と密接に関係し、地域の食文化を象徴する品目であり、この食文化を次世代に伝えていく ためには、一定量の生産量の確保、そして新たな食べ方の創作により認知度を高め、需要の増大を図っていく必要があると考えられています。 現在は、加工食品プロジェクト等も動き出し、加工原料としても栽培面積の拡大を目指しています。
出荷については、JAやまがた西部営農センターを通じてJAの直売所を中心に販売しています。一部地元市場への出荷もありますが、 ほとんどが地元消費となっています。どんな料理でもおいしく食べられますが、でんぷん質で甘みが強く、食べるとホクホクしているので、 特に天ぷらや煮物にするのがお勧めです。県外にはイベント以外に販売されることがほとんどありませんので、秋に山形蔵王観光にお越しの際は、 是非直売所を訪れ、蔵王かぼちゃを探してみてください。

