広さ1畳、木箱で小売り/都心の小さなリンゴ屋

通販事業を休止して昨年10月に店の経営を引き継いだ

 オフィス、飲食店が立ち並び、昼夜にぎわう東京都新宿区四谷三丁目。地下鉄駅1番出口前に、リンゴ小売店「相馬家」がある。都心の人気タウン駅前の好立地だが、飲食店と飲食店に挟まれた三角形の“隙間スペース”に立地する店舗面積わずか約1畳しかない小さな店で、木箱を並べて、ほぼ露店スタイルで青森県産リンゴを販売している。

 経営するのは奈良岡慶哉さん(30)=旧相馬村(現弘前市)生まれ。店は幼なじみ2人と一昨年10月に開業した。ただ、結婚を機に帰郷し、地元で相馬産リンゴの通信販売業を始めた。店が1周年を迎えたころ、幼なじみから「閉店する」と聞かされた。

 「立地が抜群にいいのに、閉めるのはもったいない」。通販事業を休止して急きょ上京し昨年10月に店の経営を引き継いだ。都内で商売するには高騰する賃料の捻出が大きな課題となるが、約1畳の狭い店だけに、単身アパートの家賃並みに固定費を抑えられるのが魅力だった。

 顔見知りの地元農家から直接リンゴを仕入れ、サンふじを3個400円など都内ではお手軽な価格で販売。木箱に詰めたサンふじ、名月、王林、星の金貨など相馬産リンゴが次々に売れていく。

 1~2月は東京とはいえ、ほぼ屋外にある店舗の寒さが身にこたえた。生まれたばかりのわが子を思い浮かべて、寒空に立ち続けると、近くの飲食店から「これ食べて」と差し入れをもらったり、「青森は雪が大変みたいね」と声をかけてもらうようになった。「青森リンゴはシャキシャキしてて、他県産とは違うね」との常連客の評価がうれしかった。

 ふるさと相馬に強い愛着があり店名を相馬家としたが、当初は福島県相馬市の店と間違えられることが多かったという。折に触れて弘前市相馬地区を売り込んでいる。

 大口で売れることもあった通販事業と違って、数個単位ずつでしか売れないが、「個人経営なら十分やっていける」と手応えをつかんだ。ただ、課題も感じている。現在は生産者から直接リンゴを買い付けているものの、個人でCA貯蔵施設を持っている人がいないため、今後は大手業者から購入することになり、仕入れ値が割高になる。

 「東京の夏は暑い。温度管理できるショーケースに入れて化粧箱に入れたり、ちょっと高価格帯のリンゴを販売する予定。無添加リンゴジュースやカットリンゴも扱っていきたい。通販事業も再開できれば」と展望を描く。インバウンド(訪日客)も多くなっており、「店名を『相馬家TOKYO』に変えようかな。やりたいことはいっぱいある」と夢は膨らむ。

 野球で鍛えた引き締まった体形と、あか抜けた雰囲気。青森らしさはあまり感じられないが、話に興が乗ると津軽弁の相づちが思わず飛び出す。

 「んだっす」

<ならおか・けいや 1996年、旧相馬村(現弘前市)生まれ。青森山田高校卒業後に上京し、建設会社、青果店で働く。青果店勤務時代に高価格で通年販売していた県産リンゴに可能性を感じ、2024年に帰郷し自ら通信販売を始めた。25年10月、幼なじみが新宿区四谷三丁目で営んでいた小売店の経営を引き継いだ>

 
出典:Web東奥