農研機構は、筑波大学およびサナテックライフサイエンス株式会社と共同で、農研機構等が開発した独自のゲノム編集技術「inplanta Particle Bombardment(iPB)法」をメロンに適用し、果実の熟成に関わる遺伝子を不活化することで、日持ち性が良く、食べ頃を調整できるマスクメロンの作出に成功した。
近年、日本国内におけるメロンの生産量は減少傾向にある。担い手や労働力の不足に加え、栽培の難しさや市場価格の不安定さが背景にあり、作付面積・出荷量ともに縮小。こうした状況の中、メロン産業の持続的な発展を目指すには、省力化や安定生産に貢献する技術革新と、生産者、流通業者、消費者にとって価値のある新品種の開発が求められている。特に「日持ちの良さ」は、食品廃棄リスクの低減や流通コストの削減、価格の安定に直結する重要な育種目標の一つといえる。
農研機構、筑波大学、サナテックライフサイエンスからなる研究チームは、メロンの日持ち性向上を目指すにあたり、メロンの果実の熟成(追熟)に関わる「CmACO1」という遺伝子に着目した。CmACO1 はエチレンという植物ホルモンを合成する酵素の遺伝子。メロン果実は収穫後にエチレンを自ら放出し、それによって軟らかく甘くなるが、適期を過ぎると傷みも進む。CmACO1 遺伝子をゲノム編集により不活化することで、エチレンが作られなくなり、「追熟が遅く、日持ちするメロン」ができると考えた。
これまで、農研機構と株式会社カネカが共同開発した独自のゲノム編集技術「inplanta Particle Bombardment(iPB)法」をメロンに適用することで、CmACO1 遺伝子が不活化した植物体が得られ、期待通りエチレンの放出がほとんど見られないことがわかっていた。
今回、iPB 法によりゲノム編集されたメロンを作出し、日持ち性の評価を行ったところ、収穫後1 ヶ月以上経っても果皮は緑色で、果肉も固いままだった。さらに、このゲノム編集メロンをエチレンにさらすことで、通常通り熟して食べ頃になることが確認。収穫後7日目に高濃度のエチレンを24時間処理したところ、処理終了後3日目には果肉が軟らかくなり、また果肉のみずみずしさも増して、通常の完熟メロンとほぼ同等の状態に達した。
これにより、必要なときに追熟を行う”オンデマンド型”の流通が可能となり、廃棄リスクの低減や輸出の拡大にも大きなメリットが期待される。なお、このエチレンによる追熟法は輸入バナナでは一般的に用いられている。
同成果は、生産者にとっては収穫のタイミングを柔軟に決められる、流通業者にとっては収穫後の鮮度保持や輸送に関わるコストを削減できる、消費者にとっては旬の時期にしか味わえなかった果物をより長い期間楽しめる等のメリットがあり、メロンの国内需要の拡大や輸出促進に向けた大きな一歩。今後、関係省庁への届出や品種登録を行い、3年後を目処に市場への投入を目指す。
出典:JAcom

