【増えた苗おすそ分けでもアウトかも?】

その行為、種苗法違反かもしれません

 突然ですが、みなさんは次の行為に心当たりはないでしょうか?

  • ホームセンターで購入した苗から美味しいブドウができたので、増やした苗を家庭菜園仲間に譲った
  • 増えすぎたイチゴの苗がもったいないから、友人に無償で譲った
  • 購入した貴重なバラの苗から増やした株をフリマアプリで販売する

 一見どれも「家庭菜園あるある」で、つい気軽にやってしまいそうなことばかりですが、これらはすべて法律違反に当たる可能性があります。どこからがアウトなのか、種苗法のルールを具体的に見ていきましょう。

— 種苗法とは? —

 そもそも種苗法とは、簡単に言えば「新しい品種を作った人(育成者権者)の権利を守る」「種苗の品質を保証する」「農業全体の発展を支える」という三つの目的を持つ法律です。
 具体的には、種苗法は二つの柱があります。ひとつは、品種登録制度によって新品種を開発した人や企業に独占的な権利を与え、その努力や投資を守ることです。これにより、育成者は安心して研究開発に取り組むことができ、味や形、育てやすさなどが優れた品種の誕生が促されます。

 もうひとつは、指定種苗制度によって種苗の品質や表示を適正に管理し、どこで作られた種や苗なのかが分かり、安心して購入できる仕組みを整えることです。これにより、家庭菜園や農業の現場で安心して種や苗を利用できる環境が整えられます。

 つまり、我々が日頃おいしい野菜や果物、美しい花の栽培を家庭菜園で楽しめるのは、種苗法があるからこそなのです。

— 品種登録制度とは? —

 生産者や企業、研究者が苦労して生み出した新品種は、開発者(=育成者)が農林水産省に出願し、新品種として認められると、知的財産権のひとつである「育成者権」が付与され、「登録品種」として管理されます。この育成者権を持つ「育成者権者」は、種苗の増殖や流通といった利用行為に一定の制限を設けることができます。

 また、苗や種を海外に持ち出したり、決められた国内の地域以外で収穫物を得る目的で育てたりすることが禁止されている登録品種もあります。こうした規制は、品種の流出や不正な利用を防ぎ、農業の持続的な発展や地域ブランドの確立、日本の農業の競争力向上、さらには国際的な知的財産の保護につなげることを目的として、令和2年に改正されました。

 以上のルールを守らないと種苗法違反となり、「10年以下の拘禁刑」または「1,000万円以下の罰金」、あるいはその両方が科されます。そのほか、育成者権者から民事訴訟を起こされるリスクもあり、その代償は決して軽くありません。

— 実際にあった違反例 —

 2024年にはイチゴ品種「桃薫(とうくん)」の苗を育成者権者に無断で増やし、フリマサイトで販売したとして、静岡県の20代無職、岐阜県の60代会社員の2名で逮捕。愛知県の50代農業者等の複数名が検挙され、うち6名については罰金刑が科されました。
ブドウの「シャインマスカット」や「ナガノパープル」でも、会社員や農業者が許諾を得ずに苗を増やし、フリマサイトで販売したことで、罰金刑が科されています。

 シャインマスカットは、かつて海外に流出したことをきっかけに、中国で日本の何十倍もの広さで栽培されるようになり、輸出先で日本産と競合して価格が下がってしまうなど、大きな影響が出ています。

 種や苗は、一度外に出てしまうとどんどん増やすことができるため、ほんの少しの流出でも日本の農業に大きな痛手となりかねません。「自分だけなら大丈夫」「少しだけなら問題ないだろう」と思ってしまいがちですが、安易な考えは危険です。

 
出典:マイナビ農業