下水汚泥から再生リンを回収し、肥料原料として活用する取り組みが加速している。国土交通省によると、ロシアのウクライナ侵攻でリンの供給が不安定になったことを契機に、国の支援を活用してリン回収施設を新たに整備する自治体が増えている。輸入に頼る肥料原料の国産化を進め、供給と価格の安定につなげる。
国交省によると、下水汚泥からリンを回収する施設は、2022年では6カ所(5自治体)にあったが、現在は東京都江東区や横浜市、広島県福山市など11カ所(8自治体)に拡大している。直近では、26年4月上旬に福岡市で国内最大規模となる年間300トンの再生リンの回収を目指す下水処理施設が誕生した。再生リンは、JA全農ふくれんが肥料の原料として活用する予定だ。
これまで福岡市では博多湾の富栄養化対策のため、東区や西区でリン回収施設を稼働させていた。しかし、西区の施設が老朽化したことに伴い、より効率的な施設に更新するため、25年度に着工を開始した。26年度は回収量などの実証試験を行い、27年度にふくれんへの再生リンの出荷を始める。
下水汚泥は処理過程で「初沈汚泥」と「余剰汚泥」に分けられる。市によると、新たな施設では、下水汚泥に含まれるリンの約95%が含まれる「余剰汚泥」だけを処理することで、従来の2倍の効率で回収できるという。
ふくれんは22年から、市内の下水汚泥から取り出した再生リンを活用したエコ肥料「e・green(イーグリーン)」を販売している。リンは輸入に依存しているため、国際情勢に左右されやすい。発売を開始した時期は、ロシアのウクライナ侵攻の影響で輸入量が減り、肥料価格が高騰していた。
ふくれんは「輸入リンを使った製品に比べ、再生リンの肥料は安価で安定していたため生産者から喜ばれた」(生産資材課)と当時を振り返る。新たな施設の再生リンもイーグリーンの原料として活用し、同製品の生産を拡大したい考えだ。
横浜市でも、下水汚泥の資源化が進められている。同市では24年3月に、年間約40トンの再生リンを生成できる施設が完成した。JA全農かながわやJA横浜が市と連携し、再生リン入り肥料「みんなのこえ」を26年1月からJA横浜の組合員向けに販売を開始している。
(森市優)
出典:日本農業新聞

