日本の食料自給率向上の鍵を握るとされるのが「水田のフル活用」だ。九州・西日本では、二期作・二毛作が行われているが、寒冷地である北東北には気候的な制約がある。二毛作の北限は北関東・南東北とされている。その常識を打ち破る技術が「立毛間播種」。前作の収穫を待たず、その畝間に次作の種を播くという、挑戦的な技術だ。一作ごとの耕うん・整地を省くことで圧倒的な省力化を実現し、寒冷地でありながら「3年4作」を回して収入増にも繋げる―。それを実践しているのだ。
もちろん立毛間播種は万能ではない。播種量が通常の1.2~1.5倍になること、小麦播種時にトラクターが走行するタイヤ跡の影響により大豆の収量が1割程度落ちてしまうこと、そして播種後の降雨に小麦の発芽が左右される自然条件のリスクが残る、と清水さんは説明してくれた。
「それらのデメリットを差し引いても、得られるメリットの方が圧倒的に大きいのです。まず、小麦の収量が確実に向上します。理想的な時期に播種できる効果は絶大なのです。そして何より、大豆収穫後の耕うん・整地作業が完全にゼロになる。燃料費、機械の負担、人件費。農業経営を圧迫するこれらのコストを大幅に削減できるインパクトは計り知れません。3年4作が実現しますから、3年間で1作多く収穫できる。これは、そのまま収入増に直結します」
「立毛間播種を導入することで、作物のローテーションは複雑になります。これを単に作物を回すだけではなく、『雑草をコントロールするための輪作』だとも考えています。例えば、大豆の畑ではイネ科の雑草を徹底的に叩き、次にイネ科の小麦を作付けする際には広葉の雑草を抑える。そしてローテーションのどこかに水田を入れることで、畑の雑草の種をリセットする。作物ごとに使う除草剤の系統が違うことを利用して、特定の雑草だけが蔓延するのを防ぐことができるのです」
目先の雑草を農薬で叩く、という対症療法的な発想からの転換だ。雑草管理を長期的な視点でデザインし直し、作業効率と持続可能性を高める。条件に恵まれない土地を次々と引き受け、立毛間播種を駆使してブロックローテーションしてきたからこそ辿り着いた、開拓者ならではの経営哲学だ。
これほど合理的な技術が、なぜ他の地域に普及していないのだろうか。清水さんには、当たり前だろ、と言わんばかりに即答した。
「立毛間播種は寒冷地だからこそ絶大なメリットがある技術です。宮城県以南の地域では、11月に播種しても十分に収量を確保できる。だから、あえて立毛間播種を導入する必要性がないのです」
それでも、岩手より北の地域、例えば青森や秋田、北海道といった我々と同じかそれ以上に厳しい気候の地域では、立毛間播種は大きな武器になるはずと、言葉を続ける。「作物も小麦に限る必要はありません。当社でも今は緑肥を組み合わせた体系も組んでいますし、ご自身の地域の特産品などと組み合わせることで、自分流の立毛間播種を構築できるはずです。北国の農業の可能性を広げる十分なポテンシャルがある技術だと確信しています」
狭い農地と厳しい気候、人手の流出。そうした逆境を、知恵と最新技術、それに不屈の開拓者精神で乗り越えてきたのが、西部開発農産だ。考えてみれば、狭い農地と地域からの人材流出は、日本農業が抱えている共通の悩みそのもの。同社が磨き上げた立毛間播種は、少ない人手でも農地利用効率を高めることで、収入増を実現する。これは日本農業が抱える課題に対する、一つの現実的な解である。
出典:マイナビ農業

