[農家の特報班]牛乳は水分補給に適してる?

主要な飲料の水分保持力は牛乳が最も高い

 「牛乳は水分補給にならない?」。埼玉県の30代の男性農家から、本紙「農家の特報班」に疑問が寄せられた。幼い息子が水分不足による便秘で受診した際、医師から「牛乳では水分補給にならないので、水を飲ませて」と言われたと話す。一方、インターネットでは「牛乳は水分補給に適している」とする意見と「適さない」とする意見が混在し、「息子は水よりも牛乳を好むので、本当に水分補給にならないのか知りたい」と語った。

水分保持力 高レベル

 記者もインターネットで調べてみると、個人の体験談や根拠が明確ではない情報が多く出回っていた。そこで脱水症状などに詳しい埼玉慈恵病院(熊谷市)の藤永剛副院長に連絡し、話を聞いた。

 藤永副院長は「水分補給に適する飲料の中で、牛乳はトップクラス。ただ、水分不足による症状が出ている時は水や経口補水液が優先なので、牛乳よりも水を勧められたのでは」と見解を示した。

 “トップクラス”とする理由について、藤永副院長は「体内に水分をとどめる水分保持力が非常に強い」と説明する。

 水分保持力とは、体内にどれだけ水分を保てるかを示す指標(BHI)で、水を1とした値で比較する。英ラフバラ大学の研究によると、スポーツドリンクは1・1程度にとどまる一方、牛乳は経口補水液と同等の1・5前後と高く、水よりも体内にとどまりやすいことが分かっている。

 「牛乳にはナトリウム、乳糖などが含まれ、体内に長くとどまりやすい。経口補水液は塩分が多いので、日常の水分補給は牛乳が最適」(藤永副院長)。ただしカロリーがあるため、過剰摂取に注意し、水を基本にすることが大切だ。

熱中症対策には有効だが
緊急時は適さず

 「質問者のケースのように、既に水分不足による症状がある場合は、水や経口補水液を優先して摂取することが重要」と埼玉慈恵病院の藤永剛副院長は説明する。牛乳は吸収される速度が水や経口補水液と比べて遅いので、緊急時の水分補給には適さないという。

 幼児は特に、1日の牛乳の摂取量にも注意がいるという。幼児は牛乳で満腹感を得やすく、食事量が減ると食物繊維の摂取量も不足し、便秘の原因や悪化につながる可能性がある。幼児の牛乳摂取量は1日400ミリリットルまでを目安とし、食事も合わせてバランスに配慮することが必要だ。

 高齢者は、むしろ加齢に伴って食事量が減りやすいので「牛乳はタンパク質やカルシウムなど栄養面でも優れている。1日当たりコップ1、2杯程度を日常的に飲むことで、効率的に不足分を補いやすい」と藤永副院長は利点を話す。

 気温が上昇するこれからの季節は、どのように取り入れれば良いのか。藤永副院長は「牛乳は熱中症対策にも有効だ」と指摘する。

 「水分保持力が高いのは、体内に“貯水プール”を作るようなもの」(藤永副院長)。農作業に出る30分から1時間前にコップ1杯の牛乳を飲めば、日中の暑さに備えられるという。

 もちろん農作業中は小まめな水分補給が必要だ。熱中症の疑いがある場合は、水や経口補水液で速やかに水分を補給する。

 質問者に取材の結果を伝えたところ、「牛乳は水分補給に最適であると分かり、安心した。外出前に取り入れつつ、水と食事のバランスに注意し、今後の育児に生かしたい」と安堵(あんど)の様子を見せた。(高内杏奈)

 
出典:日本農業新聞