中東情勢の不安定化や円安の進行で、輸入肥料や農業用ビニールなどの価格が上昇している。コスト増は農業経営を直撃する。こうした時こそ、足元の未利用資源を活用したい。近畿地方では河川堤防の刈り草を発酵させ、堆肥として農家に無償提供している。取り組みを広げたい。
和歌山河川国道事務所は、奈良県から和歌山県にかけて流れる紀の川と、支流の貴志川の堤防で刈り取った草を半年かけて熟成させ、腐葉土として月に数回配布している。ふかふかとした良質な仕上がりで、処理量に対して利用が追いつかず、4、5年前に刈り取った草を堆肥として今も提供している。活用しない手はないだろう。
利用する農家も増えている。9年間、刈り草堆肥を畑に投入している和歌山県のヤマノイモ農家は、1ヘクタール当たり年間30トンを投入しているという。就農間もない若手農家も、刈り草堆肥を使うことで「有機JAS取得にも弾みがつく」とみる。無料で入手できる上、地域の有機資源を地域内で循環できる。地力も向上し、持続可能な農業につながる。先行する和歌山の事例を各地に広げたい。
刈り草の堆肥化は、もともと焼却処分にかかる費用を削減することが目的だった。2001年、滋賀県の琵琶湖河川事務所が試行し、近畿北陸では5拠点に広がった。兵庫県の姫路河川国道事務所が今年2月、刈り草堆肥を配布した際は、配布の前から問い合わせが相次いだという。
焼却から活用へ、処理費を少しでも削減しようと生まれた取り組みが、環境負荷の低減と農業支援につながった。
刈り草の活用は堆肥だけではない。家畜の敷料や飼料として畜産農家に提供する事例や、バイオマス発電の燃料として活用する動きもある。都市部でも公園の剪定(せんてい)枝や刈り草を堆肥やチップにして、街路樹の植栽や学校の花壇に活用する自治体がある。輸入に依存するのではなく、廃棄や焼却されてきた未利用資源を“宝”と捉え直す必要があるだろう。
課題もある。刈り草の堆肥化には保管場所と時間が必要で、行政側の負担も生じる。刈り草の量は季節によって変動し、需要とのバランスを取るのも容易ではない。また、牛に与えると中毒症状を引き起こす草や、在来の植物を“侵略”する外来雑草が混じっている可能性もある。家畜の事故や外来種の拡散を防ぐためにも、刈り取り前に植生を確認し、除去するなど十分な対策も欠かせない。
温暖化は進み、環境に配慮した農業の重要性は増す。行政と農家、地域住民らが協力し、地域資源を循環させる取り組みを広げていこう。
出典:日本農業新聞

