「野生のブドウ」が世界のワイン産業を変えるかもしれない

日本の山野に自生する、野生ブドウがすごい!

 日本の四季は美しく豊かですが、ブドウ栽培にとっては厳しい環境です。梅雨の湿気、夏の高温、秋の台風…。そんな気候のなかでもたくましく育つのが、アジア原産の野生ブドウたちです。

 野生ブドウとは、人の手で品種改良されていない、自然のままのブドウのことです。日本の秋の山野を歩くと、小さな紫色の実をつけたつる植物に出会うことがあります。それらが、ヤマブドウ(Vitis coignetiae)やエビヅル(Vitis ficifolia)、サンカクヅル(Vitis flexuosa)など、アジア原産の野生ブドウたちです。日本には7種8変種の野生ブドウが自生しており、北海道から沖縄まで、それぞれの地域の気候や地形に合わせて分布しています。

 野生ブドウの果皮は黒紫色で、近年の暑い夏でもしっかりと黒々とした果実をつけます。果実は小粒で酸味が強く、ポリフェノールなども豊富に含んでいます。野生ブドウは長い年月をかけて日本の自然環境に適応しており、病気に対する耐性が強いのも特徴です。

 こうした果実品質や病気への耐性、環境への適応力は、品種改良の素材として非常に適しています。近年は気候変動による温暖化の影響で、従来の品種が育てにくくなっています。こうした状況の中、アジアの野生ブドウの遺伝子を生かした新しい品種づくりが日本でも進められています。

野生ブドウが切り開く! ワイン産業の未来

 ワイン用の交配品種としては、「ヤマ・ソービニオン(カベルネ・ソーヴィニヨン×ヤマブドウ)」、「ヤマ・ブラン(ピノ・ノワール×ヤマブドウ)」、「山幸(清見×ヤマブドウ)」、「富士の夢(メルロ×サンカクヅル)」、「香大農R‐1(マスカット・オブ・アレキサンドリア×リュウキュウガネブ)」、さらにアジア原産野生ブドウを掛け合わせた「小公子」などが栽培され、ワインとして楽しむことができます。

 2025年には、岡山理科大学がワイン用品種「マスカットシラガイ(マスカット・オブ・アレキサンドリア×シラガブドウ)」を品種登録出願しています。

 アジアの野生ブドウは、何千年もの進化のなかで培われた環境適応能力という「遺伝的な宝物」をもっています。この宝物を現代の科学技術と組み合わせることで、未来のブドウ栽培に新たな可能性が開けます。病気に強い品種を使えば農薬の使用量を減らすことができ、日本の気候に適した品種であれば栽培管理の手間も軽減できます。

 これは環境への負荷を減らすだけでなく、ブドウ栽培家の労力やコストの削減にもつながり、持続可能なブドウ栽培の実現にも寄与します。

 
出典:現代ビジネス