鉄分の一日の摂取量・効果・不足すると現れる症状

鉄分を多く含む肉や魚、レバー、大豆製品、緑黄色野菜などと一緒に、柑橘類やキウイ、いちごなどの果物を組み合わせる
「鉄分」とは?

 鉄分は、私たちの体に欠かすことのできないミネラルのひとつです。成人の体内にはおよそ3〜4gの鉄が存在しているとされ、わずかな量でありながら生命維持に極めて重要な働きをしています。体内に存在する鉄の約70%は赤血球のヘモグロビンや筋肉中のミオグロビンとして存在し、肺で取り込んだ酸素を全身の細胞へ運搬する重要な役割を担っています。これらは「機能鉄」と呼ばれます。残りの約30%は肝臓や脾臓、骨髄などに「貯蔵鉄」として存在します。
 また、鉄分には「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」の2種類があります。ヘム鉄は肉や魚などの動物性食品に含まれ、吸収率が高いのが特徴です。一方、非ヘム鉄は野菜や豆類、穀類などの植物性食品や卵に含まれ、吸収率は低めです。動物性たんぱく質やビタミンCと一緒に摂ることで吸収率が向上します。

鉄分の一日の摂取量

 日本人の食事摂取基準(2025年版)では、1日の推奨量は以下の通りです。成人男性(18〜29歳):7.0mg/日、成人男性(30〜49歳):7.5mg/日、成人男性(50〜74歳):7.0mg/日、成人女性(月経あり)18〜29歳:10.0mg/日、成人女性(月経あり)30〜64歳:10.5mg/日、成人女性(月経なし)18〜74歳:6.0mg/日、妊婦(妊娠初期):+2.5mg/日(付加量)、妊婦(妊娠中期・後期):+8.5mg/日(付加量)、授乳婦:+2.0mg/日(付加量)となっています。特に月経のある女性は鉄の損失が多いため、不足しやすい傾向があります。また、成長期の子どもやスポーツを行う人では鉄が不足しやすくなる場合があります。なお、サプリメントの過剰摂取には注意が必要です。

鉄分の効果

  • 酸素を全身へ運ぶ働き
    鉄分は赤血球のヘモグロビンの成分として肺で取り込んだ酸素と結合し、全身の細胞へ酸素を届けます。これにより細胞はエネルギーを産生し、正常な生命活動を維持できます。
  • 鉄欠乏による貧血の予防につながる
    鉄分が十分にあることで赤血球の生成が正常に行われ、鉄欠乏性貧血の予防につながります。女性や高齢者にとって特に重要です。
  • 疲労感や集中力低下の予防に役立つ
    鉄分が十分にあることで、全身の細胞への酸素供給が安定します。そのため、鉄欠乏による疲労感や集中力低下の予防に役立ちます。原因不明の疲労の背景に鉄不足が隠れていることもあります。
  • 免疫機能や代謝のサポート
    鉄分はエネルギー代謝に関わる酵素の構成成分ですので、正常な代謝機能の維持に関与しています。また、不足すると免疫機能の維持に影響する可能性があります。
鉄分の多い果物ランキング

 果物は一般的に鉄分を多く含む食品ではありません。特に生の果物の鉄含有量は少なく、鉄分補給という観点では肉類や魚介類、豆類の方が効率的です。果物の中では乾燥させて栄養素が濃縮されたドライフルーツに比較的多く含まれています。なお、ランキングに示した鉄の含有量は、「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」を参照しています。

  • 鉄分の多い果物1位 干しぶどう(レーズン)
    干しぶどう(レーズン)は100gあたり2.3mg含まれています。乾燥によって栄養素が凝縮されており、果物の中では鉄分を比較的多く含みます。ヨーグルトやサラダのトッピングにもおすすめです。
  • 鉄分の多い果物1位 乾燥あんず
    乾燥あんずは100gあたり2.3mg含まれています。レーズンと同程度の鉄分を含みます。食物繊維やカリウムも豊富で、間食として取り入れやすい食品です。
  • 鉄分の多い果物3位 乾燥いちじく
    乾燥いちじくは100gあたり1.7mg含まれています。鉄分に加えて食物繊維も含まれており、手軽に摂取できるドライフルーツです。ドライプルーンも1.1mg/100gと鉄分を比較的多く含みます。鉄分だけでなく食物繊維も豊富で、日常のおやつとして取り入れやすい食品です。
鉄分が不足すると現れる症状

  • めまい・立ちくらみ
    鉄分が不足すると酸素を運搬する能力が低下しますので、急に立ち上がった時などに脳への酸素供給が追いつかず、立ちくらみやめまいを感じやすくなります。頭痛が起こることもあります。
  • 動悸・息切れ
    鉄分が不足すると酸素を運搬する能力が低下しますので、日常的に息切れを感じやすくなります。酸素不足を補うために心臓は心拍数を増やして血液をより早く送り出そうとします。そのため動悸や息切れを感じることがあります。
  • 倦怠感・集中力低下
    鉄分が不足すると、血液中のヘモグロビンが減少して酸素が全身に十分に行き届かないため、細胞でのエネルギー生成がうまくいかず、慢性的な疲労感やイライラを感じやすくなります。脳にも酸素不足の影響で注意力の低下などが起こります。
鉄分を過剰摂取すると現れる症状

  • 鉄過剰症
    鉄は体外へ排出されにくい栄養素のため、鉄剤や鉄サプリメントを長期間利用したり、推奨量を大きく超えて摂取したりすると、体内に鉄が過剰に蓄積する可能性があります。過剰に蓄積した鉄は肝臓、心臓、膵臓などの臓器に沈着し、肝機能障害や心機能への影響、糖代謝異常などの健康障害につながることがあります。
  • 胃腸症状
    鉄分を過剰に摂取すると胃腸への刺激が強くなり、吐き気、腹痛、便秘、下痢などが起こることがあります。
  • 肝機能障害
    鉄分は貯蔵鉄として肝臓に蓄積するため負担がかかります。肝機能が低下すると疲労感を強く感じることがありますので、注意が必要です。
鉄分の効率的な摂取方法

  • たんぱく質とビタミンCと一緒に摂る
    特に野菜や豆類、穀類などの植物性食品や卵に多い非ヘム鉄は、動物性たんぱく質の多い食品(肉・魚)やビタミンCの多い食品(柑橘系の果物、ブロッコリー、いも類)と一緒に摂ることで吸収率が向上します。
  • ヘム鉄を意識する
    動物性食品(肉・魚)に多く含まれる吸収率の高いヘム鉄を意識して摂りましょう。特に赤身肉(牛肉)やレバー、かつおなどに豊富に含まれています。
  • 吸収を妨げる飲み物に注意
    お茶やコーヒーに含まれるタンニンは鉄分の吸収を阻害します。食事中や食事のすぐ後は避けて、時間をずらして楽しみましょう。

 
出典:メディカルドック