Monthly Archives for 2024年 9月

山形・月山が育む山菜

出典:日本経済新聞

 

 山菜といえば、フキノトウなど早春の苦みを楽しむ植物と思う人が多いだろう。実際は夏以降も採れるミズやフキなど300種類以上あるといい、調理法とともに伝承されてきた食文化だ。そう聞いて、山形県西川町にある山菜料理を出す旅館「出羽屋」を訪ねた。

 特別豪雪地帯にある西川町は山菜やキノコの宝庫として知られる。県西の月山の広大なブナ林では落ち葉が堆積した腐葉土が、雨雪をろ過してきれいな水を育み、その栄養分で動植物の営みを支える。雪解けが徐々に進み、芽吹いたばかりのえぐみが少なくみずみずしい山菜が、長い期間にわたって採れる。厳しい冬に飢えをしのぐために、独自の調理や貯蔵の方法も根付いた。また、山岳信仰で出羽三山(月山、羽黒山、湯殿山)を参詣する行者をもてなすため、料理として洗練された。

 出羽屋4代目社長の佐藤治樹さんは「生態系を守りながら山の恵みをいただく、地域の食文化をつなぎたい」と話す。旅館を継ぐために東京の大学で観光や経営を学んでいたが、行者宿から山菜料理旅館へ昇華させた祖父・邦治さんが亡くなり、料理人になろうと決意。料亭修業をしつつ卒業後、調理師専門学校で学び、2012年に帰郷した。

 山菜は市場などでも入手できる。ただ、流通に乗ると鮮度が落ち、アクが回ってしまう。「祖父のように自分も山に入り、また、その日採れた新鮮なものを届けてくれる、地域の人と連携する料理人になりたいと考えたのです」

 5月末、佐藤さんと山菜採り名人の居鶴弥太郎さんと、大きな雪だまりが残る月山の麓を散策した。居鶴さんは出羽屋に山菜を届ける十数人のうちのひとり。「山菜採りは雪追っかけです」と居鶴さん。雪解けの機を見て目当ての場所へ行く。アイコやシオデ、ワラビなどがあちこちに。ちょうど月山筍(がっさんだけ)が採れる時期で、地元の人も来ていた。

 ウルイ、ウド、ナンマイ、ヤマニンジンなど山菜12品の盛り合わせ。山菜とひとくくりにしてしまうが、すがすがしい薫りやシャキッとした歯触り、ぬめりのある感触など、それぞれに個性がある。上品な甘さがあるのはアマドコロ。しかし、味付けはしていない。「ゆがいて水にさらして甘さを最大限に引き上げたら、それ以上することはないと思うのです」。少量の塩や味噌、ショウガは使うが、山の中で歩きながら、または届いたものを生でかじり、日当たりの加減でも違う繊細な風味に合わせて味を添えるだけ、と話す。

 肉や魚も「山のもの」として山菜に含める。この日はマスとヤマメの刺し身のほか、クマ肉を使ったクマ鍋、衣をつけて揚げたクマカツなど。「猟師からクマの命をいただいたので、おいしく召し上がっていただけるよう工夫する。それが料理人にできることです」。クマ鍋の肉はかみ応えもあったが、甘いタマネギやつるんとしたジュンサイと軽くいただいた。一方、カツに使うのはモモ肉。野生で筋肉が発達し硬いが、スジごと下煮することでそのうまみも硬さも口の中で味わいとなって広がる。

 日本では古くから山菜が利用されてきた。各地の縄文遺跡からは山菜類の炭化した遺物などが出土し、「青森ではタラの芽、富山ではコゴミが食されていたと推察されます」と東京家政学院大学名誉教授、江原絢子さんは話す。時代は下り、「斐太後(ひだご)風土記」(1873年編さん)には岐阜県飛驒地方ではワラビ根をくだき、何度も水にさらしてアクを除き、粉にして換金したとの記述がある。「江戸時代の多くの伝統的な技法(アクの除去方法など)は、現在の山菜利用の技法につながっています」

 出羽屋では山菜名人、猟師、漁師から届く山の恵みを全て買い取る。「一緒にやりましょうと、十数年かけて関係性をつくってきました」。先人の教えに、今を生きる人の知恵と工夫も重ねて、未来へつなげる。とてつもなく長く続く食文化に触れた気がした。

 

上アケビ

竹の紙がタケノコ農家を助ける?

出典:マイナビ農業

 

タケノコ農家のために始まった竹紙

 鹿児島県は福岡県に次いで全国第2位のタケノコ生産量を誇る。さらに、竹林の面積は全国1位だ。その北西部にある薩摩川内(さつませんだい)市にある中越パルプ工業株式会社の川内工場で「竹紙(たけがみ)」が作られている。原料は地元のタケノコ農家の竹林で伐採された竹だ。この竹紙がタケノコ農家を助け、さらには放置竹林の対策の一つになっているという。しかし、その背景にはもっと大きな社会課題解決への思いがあった。

 8月上旬、鹿児島県の北西部にある薩摩川内市の竹林を訪れた。作業がしやすいように傾斜地は段々に整備され、軽トラックや農機が走れるほどの幅の道は、散歩道のように歩きやすい。街なかより涼しいことも相まって、とても居心地の良い空間だ。放置竹林対策の取材でやってきたのだが、ここは放置竹林とはほど遠い。
 「この竹林は持ち主のタケノコ農家さんが手入れしやすいように工夫して整備したものなんです。タケノコの生産効率を上げるために5年たった竹を伐採するんですが、それが『竹紙』の原料になります」。そう教えてくれたのは、中越パルプ工業株式会社の西村修(にしむら・おさむ)さん。同社では国産の竹から紙を製造しており、その原料となる竹を薩摩川内市やとなりの薩摩郡さつま町のタケノコ農家から購入している。

他の製紙会社が竹の紙を作らないわけ

 まずは輸送のコスト。竹は中が空洞なので、輸送の際に非常にかさばる。トラックなどに一度に積める量が一般的な木材に比べて圧倒的に少ないため、輸送の効率が悪い。
 この問題を、同社は農家に自ら竹を持ち込んでもらうことで解決している。
 現在、タケノコ農家は中越パルプ工業の取引先であるチップ工場に竹を持ち込む仕組みになっている。製紙工場が紙の原料として買うのは丸太の状態の木材ではなく、木材を細かく切削した「チップ」だ。木材は専門の工場でチップに加工される。そこに持ち込む際の輸送コストは農家負担だが、竹は有償で引き取ってもらえるので、農家にとってはプラスになる。

 

遠園地

シャインマスカットの次のスター品種は?

出典:食べちょく

 

ぶどう界は、次のスターを待っている!

 「シャインマスカット」という大スターの誕生から、はや30年。シャインマスカットはこの10年で栽培面積も10倍になるなど、まさに、ぶどう界の革命児でした。

 皮ごと食べられる手軽さ、パリッとした食感、子どもから大人まで楽しめるあま~い味わい。さらに、生産者にとっても育てやすいというから、異例のスピードで市場を席捲したのも納得です。

 とあるぶどうの生産者さんも、「昔は”ぶどう”といえば”巨峰のような紫色と味”を想像したけれど、今の若いお客さんは”ぶどう”といえば”シャインマスカット”を想像する方も多いんですよ。シャインマスカットがいかにぶどうの歴史を変えたか、ですよねえ」と驚くほど。

 シャインマスカットブームも記憶に新しいですが、いまやその「シャインマスカット」から生まれた品種が続々と登場して、ぶどう界はひそかに沸いています。

 ライチのようなぶどう、シロップみたいに甘いぶどう…
色も、味も、形も、食感も、大きさも、全部違う数十以上の新品種から、次にヒットするぶどうを食べチョクが大予想します!

食べチョクが予想する
「次世代スターぶどう」は?
1位:ライチみたいなぶどう!
【富士の輝】

 見た目は黒く、パリッとした食感で弾けるぶどうです。

「ブラックシャインマスカット」という異名もありますが、シャクシャクした食感と、くせのないすっきりした甘さ……「何かに似ている?」「どこかで食べたことのある味…」

 あっ、ライチだ!

 甘さの強いぶどうは数粒で満足感がありますが、「富士の輝」はいつまでも食べられる甘さです。皮ごと食べられるのも手軽でうれしい。

 次世代スター1位にふさわしいぶどうです!

2位:蜂蜜みたいな甘さ!
【マスカ・サーティーン】

 シャインマスカットの甘さと香りが、もっとパワーアップした品種です。その甘さは、まるで蜂蜜のよう!

 食感は巨峰のような”ちゅるん”とした柔らかさ。シャインマスカットの”パリッ”とした食感がお好きなかたには評価が分かれるかもしれませんが、あま~いぶどう好きさんには絶対に食べていただきたい品種です。

3位:かわいい・楽しい・おいしい・3拍子揃った【マイハート】

 まず特徴的なのは、なんといってもその外観。名前のとおり、粒がハート形なんです!色もピンク色でかわいらしいですよね。

 サクッ、サクッという歯ごたえと、渋みのないさわやかな甘さも魅力。キュートなビジュアル、楽しい食感、誰からも愛される味わいで、まさにスター候補にふさわしいぶどうです。

 一世を風靡している、シャインマスカット。口に入れるとパリッとした薄皮から広がる、ジューシーな果汁と、たくさん食べてもつかれない絶妙な甘さが魅力で、ご家庭用だけでなく”贈り物”としても人気が高いぶどうです。

 食べチョクでは完熟したもっとも美味しい状態のシャインマスカットが、高級果物専門店などと変わらない価格、場合によってはもっとお手頃な価格でお届けできます。

 せっかく買うなら自分好みのものを選びたいという方に、「朝採れ」「ギフト」などのこだわりや、価格ごとに集めました。

 大切な人に立派な大粒シャインマスカットを贈りたい方、採れたて新鮮さを求める方、それぞれに合ったシャインマスカットがきっと見つかるはずです。

 

上園地

ぶどうの樹の「表の年」と「裏の年」

出典:やまふじぶどう園

 

ぶどう作りの「表の年」と「裏の年」のこと

「去年は『裏の年』だったから、今年は『表の年』だね。」ぶどう園ではこんな会話が飛び交います。ぶどうは植物であり、生き物。だからこそ、前の年に頑張っていいぶどうを実らせた樹は、その翌年はちょっと疲れてひと休み。そして、一年休んで元気を取り戻したぶどうは、また次の年にいいぶどうの実をつける。その年の気候の良し悪しとは別に、そんなふうなサイクルがあるんです。

 これは、私が考えた言葉ではなくて、果樹栽培の現場ではむかしむかしから言われてきたこと。先人たちは、昔からこのような自然のサイクルに沿ってぶどうをはじめとした果樹を栽培してきたんですね。

「表の年」と「裏の年」とワインの味わい

「表の年」に採れたぶどうからは、とてもおいしいワインができあがります。一方で、「裏の年」だからワインがダメかというと、それもまた一概に言えないのも面白いところ。そういう年のぶどうはロゼにしたり軽めに仕上げてみたりすると、おいしいワインになるんです。

 なので、ホーライサンワイナリーに限らず、どこかひとつのワイナリーを気に入ったら毎年飲んでみると楽しいと思います。表の年からできたパワフルなワインもおいしいし、裏の年にできた静かなワインもまた良し。そのなかで「去年のワインはおいしかったね〜」みたいに会話が弾んだら楽しいですよね。ワイナリーの常連さんとは、よくそういう会話をさせてもらっています。

気候変動とワインのヴィンテージ

 ただ、最近はこの「表」と「裏」のサイクルが崩れつつあるとも感じます。気候変動の影響で、日本中がありえないくらい暑くなっていますよね。これによって、自然界の正常なサイクルが壊れてしまっているような……。

 表も裏も関係なく、丁寧に育てたぶどうが収穫直前に突然のゲリラ豪雨でやられてしまったりといったことも以前より多く起きるようになってしまいました。その一方で、昨年2023年は表も表、超グレートヴィンテージ。いい年も悪い年もあるわけですが、気候変動の影響で、今年はどうなるのかがさっぱり読めない状態になってしまっています。

 2024年は表が出るか、裏が出るか、早稲品種の生食用ぶどうが実りの時を迎えた今でも、最終的な見通しはまだわかりません。ですが、いずれにしてもその年にできるぶどうに感謝して、おいしくなるように心をこめてワイン造りをしたいと思いますので、2024ヴィンテージのワインたちも、どうぞお楽しみに!

 
 

キミ、クリ

能登・白米千枚田崩落「脱穀諦めない」

出典:日本農業新聞

 

 21日の豪雨で崩落した石川県輪島市の白米千枚田に25日、管理・運営を担う白米千枚田愛耕会メンバーが、スコップを片手にいち早く復旧作業を始める姿があった。「地元の誇りを失うわけにはいかない」--。同会会長の白尾友一さん(60)は、元日の能登半島地震から、やっとの思いで水を張れるまで復旧した田が、再び崩落する様子を目の当たりにした。「もうさすがに立ち直れないよ」とうなだれる白尾さんを再び奮い立たせたのは「修復していかんとダメや。千枚田がなくなる」と励ます愛耕会の仲間だ。

 一部が抜け落ちてU字溝が露出するあぜに、農地から流れた大小の岩や土砂が転がる道路。棚田の原形も残さないほど崩れ落ちた田が眼前に広がる。「元日の地震の時もここまでひどくはなかったのに」。白尾さんが絞り出す言葉に、爪痕の大きさがにじむ。

 9カ月の時間をかけて、ようやく収穫にこぎ着けた稲がある。27日には、脱穀を予定していた。被災の疲れが拭えない中、「一緒に直して千枚田を残そう」と互いに励ましながら再び復興の一歩を踏み出した。

 豪雨被害の片付けに集まったのは白尾さんと妻の真紀子さん(40)に加え、出口彌祐さん(77)、山下博之さん(65)、竹上浩幸さん(62)の5人。小型の油圧ショベルやスコップで、岩や土砂の撤去作業に力を込める。

 「今年産が終わったら、どっかに逃げたいね」。白尾さんが冗談のようにメンバーに投げかけると「そんなこと言わんと千枚田残していこうよ」「白尾さんを今度どっか連れてって一杯飲ませようか」「元気出してもらわなきゃね」と口々に励まし合う愛耕会の仲間がいた。震災後に愛耕会会長に就任。会員で最年少ながら、復興を引っ張ってきた白尾さん。「いろんな人に助けてもらってきたんだ」とかみしめる。

 千枚田復興の歩みを始めた愛耕会だが、新たな問題も浮上している。活動拠点としていた道の駅「千枚田ポケットパーク」の被災だ。今回の豪雨で日本海側の駐車場が崩落。建物も危険度が高いとして、県と市は24日正午に閉鎖した。白尾さんは「災害は、千枚田だけでなく、復興拠点まで奪っていくのか」と天をにらむ。

 

上園地