Daily Archives for 水曜日, 1月 2025

集落みんなでヤギを飼う

出典:季刊地域

 

サル害もイノシシ害も減った

 長野県小谷村の伊折集落では、地域全体で農地を守るためにヤギを飼育する取り組みが行われています。集落では、サルやイノシシなどの獣害が問題となり、高い電気柵による対策が一般的でしたが、住民はこの方法に不満を持ちました。そこで、滋賀県の事例を参考にしてヤギの放し飼いを始め、集落全体での協力体制でヤギの飼育と管理を行い、地域の農業と生活環境の改善を目指しています。

住民全員参加で集落営農

 伊折集落は長野県北安曇郡小谷おたり村の南部に位置している小さな集落で、10戸25人ほどが生活しています。伊折集落には、住民全員が加入する伊折農業生産組合という集落営農組織(以下、生産組合)があります。今から約20年前に、集落の活性化と増えつつあった耕作放棄地の問題に対応するために設立されました。設立当初から共同で田畑を耕作し、棚田での稲作に加え、夏はハウスでのミニトマト、冬は小谷村特産品の雪中キャベツを栽培しています。

 筆者は東京の非農家出身ですが、伊折集落とは学生時代からの縁があり、2017年に移住しました。今は勤め仕事をしながら、土日を中心に生産組合の活動に参加しています。

6年前からサルの被害が増えてきた

 伊折集落の農地は、生産組合の設立メンバーであるおじいさんやおばあさんたちが中心となって守り続けてきました。私が移住した当時は、生産組合ができて10年ほどが経過した頃で、おじいさん・おばあさんたちも元気ではありましたが「そうはいっても年をとってきた」と口々に漏らしていました。山際の傾斜のきつい農地や集落から離れた農地は、徐々に耕作されなくなり、草が生い茂った耕作放棄地も増えつつありました。

 農作物にイノシシやクマ、シカ等による食害が見られたため、3段張りの電気柵を設置していましたが、6年ほど前からはニホンザルによる農作物被害も見られるようになりました。サルの被害を防ぐには7段張りの高い電気柵の設置が必要です。しかし、設置の労力が膨大なうえに、草刈りなどの電気柵周辺の管理を怠ると簡単に侵入されてしまう問題がありました。
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