出典:R_readyfor
私は2005年に石川県能登地区への移住と同時に19年間、地域特産品である能登栗を栽培してきました。
専業栗農家としての19年間は、どうしたら高糖度の栗を毎年安定して収穫し続ける事ができるのか、何℃で何日間冷蔵熟成したら栗の糖度が上昇し続けるのだろうか、何℃で何分間加熱調理したら栗自身の持つ甘味を最大限まで引き出す事ができるのだろうか、常に美味しい栗を作る事ばかり考えていました。
その結果、松尾栗園は収穫した栗をマイナス2℃で1ヶ月半冷蔵熟成した後に焼き栗として加熱加圧調理する事で、収穫直後より糖度が約3倍となる技術を習得しました。
松尾栗園のオリジナル商品「能登の焼き栗プレミアム」は毎年発売3ヶ月以内に売り切れる全国的な人気商品に成長。調味料、添加物を一切加えずに高糖度の栗のみを焼き上げた「無糖・能登の焼き栗ペースト」は2023年に特許を取得しました。
しかし、2024年元旦の能登半島地震で住居兼作業場が全壊。10年前に建てたマイホーム、住み込みアルバイト寮、選果場、加工施設、農機具格納庫を失いました。
松尾栗園のビジネスモデルは、収穫した栗を冷蔵熟成、焼き栗加工して初めて生計が成り立ちます。
しかし、生栗を冷蔵熟成するための貯蔵庫も焼き栗製造や梱包に必要な加工機械も草刈り機等の農機具もすべて瓦礫の下敷きとなりました。解体してまた同様の施設を再建する場合、1億円以上の資金が必要になる事が分かりました。5日間の孤立避難生活中に一度は廃業を覚悟しました。
そんな矢先、静岡県の「一般社団法人和栗協議会」様(2024年当時の名称は遠州和栗プロジェクト)から業務委託のオファーを頂きました。
栗の栽培と加工の仕事を今後も続けられる。能登の栗園を耕作放棄しなくてもいい。私の経験と知見に期待してくださる方々がいる。
本当にありがた過ぎるオファーでした。これからの人生は遠州のため、能登のため、和栗のために、精一杯「結果を出す努力」をしようと決意しました。