出典:自然栽培全国普及会
道法さんの技術は、樹の植物ホルモンのバランスを活かした技術にあります。そしてその技術は、樹の本来の姿を自然から読み取る中で、道法さんが体得してきたものです。山の樹が肥料や農薬で育ってはいないことや、現代の農学の実践でことごとく失敗してきた体験が元となっています。
通常果樹の栽培においては「剪定」という枝を切ったり仕立てたりする技術が、一つの重要な技術となります。樹の枝は幹から横へ広がるように伸びます。この横へ伸びた枝の背に、毎年、徒長枝という枝が上に向かって伸び出します。一般的にはこの上に向かって伸びる枝を切ってしまいます。なぜなら上に向かって伸びる新しい枝にはいい実がならないといわれているからです。
それこそ徹底的に上に向かって伸びる新しい枝を切るわけです。
しかし、ここでも道法さんは、常識の逆を試します。この徒長枝を活かすせん定に気づきます。前述のように、道法さんは、連合会から派遣でJAの農業指導をしていたときに、一般の農学の技術を徹底して指導もされたようです。また、そのことを自分でも実家の農園で実施しましたが何年たっても、理論どおりの結果が出たことはなかったといいます。
その他、ミカンでは放任した園地の初年度のミカンが実においしいことはみんなが経験しているのです。
肥料ではないことに気づき始めた道法さんが、その意志を決定的にしたことがありました。それは「かいよう病」という細菌性の病気の伝染が、肥料を使わなかったレモンの樹で全く見られなかったことがきっかけでした。
「かいよう病」は、果樹栽培において、みかん、レモン、キウイフルーツなどでも、猛威をふるう細菌性の伝染病。たとえば、病気の樹をはさみで剪定し、そのはさみで他の健康な樹を切ると、たちまち移ってしまうほどの病気です。
産地によっては、農薬を撒いても、樹が全滅することもあったほど。
道法さんも、広島でレモンの栽培をされているのですが、山の奥にある畑があって、土日百姓では手の回らない土地がありました。そんな情況なので到底肥料を与えることはできず、農薬も使っていませんでした。いわば放任だったのです。
草刈をしなくてはと思って、草を掻き分け掻き分け畑にたどり着くと、肥料を与えていない、たまたま放置されていた草だらけのレモンの樹に、かいよう病が全く出ていなかったことに驚愕されます。まさに腰が抜けそうだったというのです。
そして、そのヒントから肥料に原因があったことを、同じく直感されたのです。道法さんも、ますます自然栽培の可能性を確信したとおっしゃっています。「もう、これしかない!残りの人生のすべてを自然栽培にかける!」と……。