今年はサルナシの実があまりよく実のらなかったようだ。
暗門の滝に行く沢沿いの道にサルナシがあって、毎年花や実をお客さまに見て頂くのだが、事はは崖崩れでこの道が通れないので、そこを確かめることもできずに残念だった。
サルナシはマタタビ科の木性のツル植物で、コクワ、シラクチヅルなどの別名もある。北東北と道南ではニキョウと呼ぶところも多いようだ。
実が甘くておいしい。サルやクマ、それにテンも実が大好物だと言う。以前、お客様に「これはサルナシです。」と言って、「実は甘くて猿が大好きなんで、こう言うんでしょうね。」と付けたしたら、「あら、サルがいないのかと思った。」という返事が返ってきたことがある。私が「猿梨」のつもりで話したのを、「猿無し」ととられたことになる。ものの意味を伝えることの微妙さがとても面白かった。
キウイフルーツはサルナシの仲間で栽培種である。中国四川省に、日本のより大きく表面に毛の生えたものがある。日本名はオニマタタビというらしいが、中国名ではビコウトウと言う。これをニュージーランド人が品種改良で倍数体にしたのがキウイフツールだ。四川省に行ったとき、露店で野生種を実を売っていた。それを見ながら案内の中国の先生が「ここから持ち出した物をいまはお金を払って買っている。」と大いに悔しがっていた。
ビは大猿、コウも猿という意味である。だからビコウトウとはサルのモモという事になる。日本ではナシ、中国ではモモ。民族性の違いが出て面白い。
サルナシは実を食べるだけでははくツルをいろいろに利用する。
白神山地ではかつて積雪期に使うカンジキの足を乗せる部分に使った。ツルを薄く裂いて使うのだが、一番力のかかるところなので壊れやすい。それで最近ではこの部分に針金入りのホースを使い、サルナシの出番は少なくなった。
サルナシのツルの太くまっすぐな部分を餅つきの杵に使うと言う。つく前にたっぷり水を吸わせておくと、つくにつれて水が下がって餅が杵の先のつかないそうだ。でも、なにしろツル性なので杵にするような物は探すのは大変だろう。
徳島県の祖谷の蔓橋がサルナシを撚った綱で作られることは有名だ。かつてはこうして作った橋が13もあったと言うがそれだけのサルナシのツルを集めるのは大変だ。以前渡ってみたが芯には太いワイヤーロープが入っていたので安全を考えるとやむを得ないのだが興ざめだ。
西目屋村でも渡し舟を保持するのに川をまたいで張る綱にサルナシのツルを使ったと名著「砂子瀬物語」に記してある。水にも強いらしい。
落ちている実を食べてひどい目に遭ったことがある。拾った実が傷んでいたのだが、「植物だから大丈夫」とそのまま食べたらその晩食事中にものすごい嘔吐と下痢に見舞われた。幸い一過性だったから良かったが、あとでマタギの工藤光治さんに伺ったらサルが齧って捨てたようなものを食べたからバイ菌で汚染されているから注意とのことだった。それからサルナシだけは十分身にしみている。(白神マタギ社ガイド牧田肇)
出典:陸奥新報

