[熊迫る脅威]放置柿を無償収穫する柿木さん

熊の誘引防ぎ「価値ある資源」に加工

 秋田県能代市の柿木崇誌さん(38)は、収穫されずに放置された柿を無償で収穫し、柿を使ったお好み焼きやスムージーなどに加工する。管理が行き届かず、食べられることなく放置される農村の柿の木を「価値ある資源にしたい」との思いで活動。特に昨年は、思い出の柿の木を伐採したくないという依頼者から、収穫の依頼が相次いだ。

 広島県出身の柿木さんは結婚を機に2018年に妻の故郷である秋田県能代市に移住し、印刷会社で3年半勤務していた。農村には放置されたままの柿の木が多くある現状に、「価値ある資源に変えたい」との思いを募らせた柿木さん。22年から木の所有者に代わり、柿の実を収穫し、加工や販売を行う事業を始めた。自身の苗字が「柿木」であることから使命も感じたという。

 依頼件数は活動を始めた22年から20~25件程度だったが、昨年は60件以上に増加。収穫量は3トンほどで例年の3倍になった。放置柿が熊の誘引物になっていることに加え、「先祖から大切に育てた木を伐採したくない」との思いを持つ所有者からの依頼が殺到。県内では「カッキー」の愛称で親しまれるまでになった。

 依頼は無償で引き受け、収穫した柿を加工して販売することで収入を得ている。柿を使ったお好み焼きやスムージーなどはキッチンカーや地元のイベントで販売。ドライフルーツの皮むきやパック詰め、シール貼りなどは地元の高齢者施設や福祉施設に依頼。この他、地元の中学生に柿の葉の収穫体験の授業も行うなど、地域との連携を重視する。

 ただ、依頼を受ける現場は熊の出没が相次ぐ中山間地域の空き地が多かった。「作業は毎日命懸け。正直、手が震えた」と振り返る。

 今後の課題はビジネスとしての確立だ。現状は赤字のため、商品開発や販路拡大を進めて収益を上げていく考えだ。「誰もやらないことに挑戦することが自分のモットー。地域の人からの応援が活動を続ける原動力になっている」と笑顔で話す。

 

出典:日本農業新聞