イカリソウ

 

1.特性
?メギ科の多年草で,種類により常緑のものと冬場に葉を落とすものとがある。硬い屈曲した根茎が地中を横走する。
?根茎から数本の茎を出し,ハート型の葉をつける。全国各地の山地,丘陵地などの樹林下に自生する。本県では,県北地帯の広葉樹林内に自生が見られる。
2.薬効と用途
?イカリソウは,生薬名を淫羊霍(インヨウカク)といい,強精強壮薬としての製薬原料,薬酒原料,民間薬として用いる。利用部位は地上部全体で,これを天日で乾燥させて使う。民間薬としては,1日8gを煎じて飲む。薬酒は,酒1.8リットルにイカリソウ20gを3昼夜浸したもの,または,焼酎1.8リットルにイカリソウ20?30gと氷砂糖をまぜ,1ヵ月してからイカリソウを取り出して用いる。
3.栽培
(1)育苗
?増殖は実生でも行えるが,発芽率が悪く,また山出しの大きさになるには発芽してから3?4年ほどかかる。自生の株や,手持ちに苗がある場合は,株分けによる方法のほうが簡単で収穫までの年数も短い。秋,地上部の茎葉が枯れた後,根茎を掘り上げてみると,翌年の新芽が既に現われている。最低1芽を付けるようにして根茎を切り分けて苗とする。イカリソウは山野草としても人気が高く,場所によっては採取を禁止している場合があり注意を要する。また,資源保護の立場からも,採取は最小必要量にとどめるべきである。
?実生の場合は,播種は取り播きとする。4月中旬ごろから花が咲き,5月下旬?6月上旬に種子ができる。種子は,なるべくサヤが割れる直前の完熟をまって採取する。採取した種子は播種まで乾燥させないように注意する。播種場所は,日陰を好む性質から林内のほうが良い。軽く整地するか畝を切り,出来れば種子が見え隠れする程度に覆土する。畑に播種する場合は,播種直後から遮光し,土が乾かないように管理する。発芽は3月下旬から始まり,林内で育苗する場合は除草を怠らないようにする。
(2)植付
?苗の植え付けは,株分け時期等の関係から,10月ごろ行う。植付床は,軽く整地して等高線に沿って植える。畝間30cm,株間20?25cmに植え付ける。株分け苗の場合,新芽がかなり大きくなっているものもあり,埋め込むときに芽を痛めないように注意する。実生苗の場合,苗が小さいときは3本程度を1株として植え付ける。
(3)管理
?林内の場合,移植後は特別な管理を行わなくても栽培は可能である。しかし,より旺盛な生長を期待するのであれば,最低でも除草,施肥,光量の調節は必要な管理となる。除草は年1?2回,施肥も年2回ぐらいに分けて行うと生長が良い。特に施肥は効果があり,栽培試験の結果でも,施肥区(N:7,P:7,K:7,N量で50g/m 2 )は無施肥区の2.1倍の生長を示した。肥料は油粕や堆肥などが良いとされているが,化成肥料でも問題はない。
?針葉樹林内は光量が不足しがちになる。自生場所が広葉樹林内に集中していることなどから考えても,光量は最低でも自然光の30%程度は欲しい。スギやヒノキ林では,間伐や枝打ちを十分に行う必要がある。病害虫の発生はほとんど見られず,消毒の必要はない。ただし,時として新芽の発芽時期に,野ウサギによる食害を受けることがあり,多発する場合には対策が必要となる。
4.収穫,調整
?イカリソウの収穫は,根茎ごと掘り取る場合もあるが,たいていの場合,地上部のみを刈り取る。
地上部のみの採取なので株分け苗の場合,定植した翌年から収穫が可能である。時期は9月ごろ,茎葉が青いうちに行い,地上部が枯れる前に収穫を終えるように注意する。刈り取った茎葉は天日で乾燥させる。干し上がった物は,乾燥した日陰に保存するか,すぐに酒や焼酎漬けにする。

出典:林間を利用した薬用植物の栽培

 

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