科目を超えて接木できる植物が見つかった!

出典:Rikejo


 

接木の固定観念をひっくり返した大発見
それはタバコだった

 切った別々の植物の枝や茎を固定しておくと組織がくっついてつながる「接木」。その歴史は古く、紀元前から始まったとされている、とてもポピュラーな農業技術です。どんな植物同士でもくっつくというわけではなく、近い系統の植物同士しかつながらないとされていました。

 ところが、長年誰も疑うことのなかったこの常識に反して、タバコが例外的に科目を超えて接着することがわかったのです! 発見したのは名古屋大学の野田口理孝准教授。さらにそのメカニズムには、ある酵素がカギとなっていることも突き止めました。

 この研究成果は、農業に大きなイノベーションを起せる可能性があります。それよりも何よりも、新しい植物現象の発見ということ自体に、純粋にワクワクさせられますよね!

 接木とは植物が自分自身の傷を治す修復能力を利用して、異なる個体同士をつなげる手法です。農業や園芸で盛んにおこなわれていて、美味しさや、耐病性、成長スピードなどを向上させたり、綺麗な花を咲かせるなど古くから利用されてきました。あまりにも歴史が古いので、もう確立された技術だとして、改めて研究しようというモチベーションを持ちにくい分野だったのだと思います。

 植物免疫という免疫機構の働きで、同じ科目の植物同士でなければ接ぐことができないというのが、植物学の長年の常識でした。

 帰国後に名古屋大学大学院の研究員となり、タバコが他の植物とどこまで接木が可能なんだろうと遊び感覚でやってみたところ、色々な植物にくっつくのでだんだんシリアスに考えるようになっていきました。なぜそんな能力を発揮することができるのか?「これは自分のもともとの研究をおいてでも、やるべき大事な発見では?」ということがだんだんわかってきたのです。2013年頃から試験を重ねて、2014年には間違いないという確信を得ました。

仲間でなくてもくっつく!タバコは非常識な植物

 数多くの植物を調べ、その植物自身の接木とか、仲間同士の接木のデータも全部調べたところ、つながる時にある酵素タンパク質が働いているということがわかりました。β1,4-グルカナーゼという植物の細胞壁を構成するセルロースを溶かす消化酵素です。

 この酵素は、遠い系統の植物を接木されても発動しません。自分の情報が相手に漏れることを防ぐためです。ところが、タバコはその制御がおかしくて、誰が相手でもそれを発揮するということがわかりました。7種のタバコ属植物を穂木(上に据える木)にして、42種類の科の84種類の種と異科接木を行い、38科73種で接木が成功しています。

 そこを解明するため、寄生植物に着目しました。遠縁の植物をつなぐことはできないといいましたが、自然界を見ると赤の他人に寄生して栄養を吸い取ってしまう寄生植物がいるなと気づき、もしかしてタバコの接木と同じ現象かもしれないなと考えたのです。寄生植物をホストになる植物に接木してみたところ、やはり接木できました。寄生植物でもタバコと同じようにβ1,4-グルカナーゼが働いて、細胞壁を溶かすことがわかりました。自然界には元々私が発見したタバコと同じような仕組みが存在していたんですね。