出典:Youmeishu
山椒はミカン科の落葉低木で、日本では北海道南部から九州までの山や野に自生しています。2~3m の高さまで成長し、春には葉の付け根に小さな花を咲かせ、秋には実がつきます。なお、雄株と雌株があり実を収穫するには雌株を植える必要があります。
山椒の実は、種子を取り除いて果皮を乾燥させて粉末にし、七味唐辛子に入れたり、粉山椒としてうなぎのかば焼きに振りかけたりします。葉にも香りや辛味はあり、さまざまな活用法があります。
- 開く前もしくは軟化された新芽 …「木の芽」として料理の香りづけや飾りに使われます。
- 未熟果 …「青山椒」や「実山椒」と呼ばれ、佃煮などに使われます。
- 完熟果 …「赤山椒」と呼ばれ、粉山椒などスパイス利用されます。
- 雄花 … 流通は少ないものの、小さな黄緑色の花も「花山椒」として料理に使われます。辛味が少なく爽やかな香りが特徴です。中国の「花椒(ホアジャオ)」と混同されることもありますが種類が異なります。
- 幹 … 殺菌作用があり、硬く締まった材質であることから、すりこ木として珍重されます。
山椒の種まきは、果実が黄色く色づく7月下旬に採種し、乾燥しないよう、湿った砂などに埋めて保存します。播種の最適期は9月下旬~10月上旬です。ただし、雄株異株(雌花の株と雄花の株が別々である植物)のため、種から育てると雄株と雌株のどちらかが成長するまでわかりません。
山椒は、種から育てるだけでなく、挿し木や接ぎ木で増やしていくこともできます。種から育てるよりも挿し木や接ぎ木のほうが実を早く収穫できます。
山椒は、水はけがよく腐植質の多い肥沃(ひよく)な土を好みます。根が弱く、根張りも浅いといわれますが、深さ1m くらいまで根が伸びることもあるため、地植えの場合は土を深く耕し、鉢植えの場合は大き目の鉢を用意するといいでしょう。
寒さには強いものの、乾燥と強い日差しには弱いことから、半日陰で適度に湿度が保たれる場所で育てるのが望ましいです。
山椒にはいくつかの品種があります。朝倉山椒は、棘がなく、果実も大きく、雌株のみが接ぎ木されて売られているので、必ず実のなる優秀品種ですが、突然枯死することがあり、難易度の高い品種です。葡萄山椒は、朝倉山椒に近い品種ですが、短い棘があり、大きな果実がぶどうの様に房なりになる多収性品種で、雌株のみが接ぎ木されて流通しています。
山椒は鳥の糞で運ばれてあちこちに自然に生えてきますので、たまたま生えた山椒を大切に育てるのもよいでしょう。ただし、雌雄は数年経って開花するまで分かりません。
花を観察してみて、花粉を出す葯(雄しべ)があれば雄株、柱頭(雌しべ)だけで花粉を出す葯が見られなければ雌株です。
市販の苗には、雌株だけを接ぎ木してあるものや、雌株と雄株の両方を接ぎ木してあるものがあります。一般には、雄株がなくても雌株だけで結実しているのをよく見ます。近所のどこかの雄株から虫が花粉を運んでくるのか、風で飛んでくるのか、よく分かっていません。
若い葉や花、実未熟果、完熟果など、活用する部位や目的によって収穫時期は異なります。木の芽として利用する若い葉は春~秋、雄花は4~5月頃、青い未熟果は5~7月頃、赤く熟した完熟果は8~10月頃になります。ちなみに、実の収穫までは、挿し木や接ぎ木の場合は2年以上、種から育てるとさらに数年を要します。
木の芽は山椒の新芽ですが、春先以外は硬くて口に残って食べづらくなります。農家は温室内の暗黒下で挿し木し、新芽が出そろった段階で一日太陽に当てて緑色にしてから収穫します。家庭で庭木から新芽を収穫する場合は、枝の先に紙袋などを被せておき、その中で出葉した新芽を収穫するとよいでしょう。