植物が発熱し赤外線で昆虫を引き寄せると判明

「植物は「会話」している、ストレスで超音波を出すことも判明」

 アマゾンに夜のとばりが下りると、ソテツはとうもろこしの芯のように突き出た雄花から、近くにいるゾウムシたちに花粉を届けてくれと呼びかける。その“呼び声”は、植物たちが自らの温度を上げて放射する赤外線だ。ソテツは自らの温度を周囲より最大15℃も高くできる「発熱植物」として知られている。この発熱によって放射される赤外線が花粉媒介者のゾウムシを引き付けることと、これが最古の花粉媒介シグナルの1つであることを科学者が初めて明らかにし、論文が12月11日付けで学術誌「サイエンス」に発表された。

「間違いなく驚くべき発見です」と、米カリフォルニア工科大学の進化生物学者であるジョー・パーカー氏は語る。「ひとたび明らかになれば、誰もが『自然がこの解決策を進化させるのは当然で、全てが見事に調和している』と感じるような、美しく完璧なシステムです」。なお、氏は今回の研究には関わっていない。

 赤外線は私たち人間の目には見えないため、花粉媒介者を誘引するメカニズムとしては奇妙に思われるかもしれない。しかし研究者たちは、動物の色覚が発達する前から存在していたと言う。

魔法のようにソテツを見つけるゾウムシたち
 論文の筆頭著者であるウェンディ・バレンシア・モントーヤ氏は、学部生時代の研究プロジェクトでペルーのアマゾンで半年間テント生活をしていたときに、森の中でしばしば道に迷った。だから、ソテツ(Zamia furfuracea)の花粉媒介者であるロパロトリア・フルフラケア(Rhopalotria furfuracea)というゾウムシが、やすやすとソテツにたどり着けることに感嘆していた。(参考記事:「意外なところで見つけたゾウムシ」)

 ソテツは目立たない植物で、大きな葉と茶色の幹を持つため小さなヤシやシダのように見えるが、針葉樹などと同じ裸子植物だ。ソテツの雄花(花粉錐(すい))も雌花(種子錐)も、花粉媒介者のゾウムシも小さいので、意識して探さないとなかなか見つからない。

「私は当時から、あれほど小さいゾウムシたちがソテツを見つけられることに興味を持っていました」と氏は語る。「私がソテツの雄花や雌花を1つ見つけると、翌日にはゾウムシたちが群がっているのです。まさに魔法のようでした」

 ハーバード大学の博士課程学生としてベローノ氏の研究室に入ったバレンシア・モントーヤ氏は、ゾウムシがソテツを探し出すしくみを探求したいと考えていた。なぜならソテツは、花粉を媒介する動物の力を借りて受粉する植物としては最も古い系統にある「生きた化石」だからだ。

 科学者たちは化石記録から、ゾウムシが少なくとも2億年前からソテツの受粉を助けていたことを知っている。2億年前といえばジュラ紀の初期、恐竜が地球を闊歩していた時代だ。とすると、ソテツがゾウムシを引き寄せるしくみを理解すれば、花粉媒介者を誘引するしくみの起源まで遡れることになる。(参考記事:「「ジュラ紀」とはどんな時代で、どんな恐竜たちがいたのか」)

 
出典:ナショナル ジオグラフィック