全国各地の果樹園をまわる中で、筆者が最も頻繁に目にするのが、中途半端な位置で切り残された枝である。剪定自体は行われているものの、「どこで切るか」という点が深く意識されていないケースは非常に多い。これは果樹栽培の経験年数に関わらず見られる傾向であり、長年栽培を続けてきた熟練者であっても例外ではない。
中途半端な位置で切られた枝は、カルスが形成されないまま次第に枯れ込んでいくことが多い。空気中には常に木材を分解する腐朽菌が存在しており、切断面が適切に閉じない状態では、これらの菌が容易に侵入してしまう。その結果、切り残された枝が枯れ、その枯れ込みが枝元へと進行していく。ある程度大きな木であればすぐに枯れるということはないが、小さな木であればあるほど、このような切り残しが原因で枯れてしまうこともある。
切り残された枝から腐朽が進行し、最終的には枝元まで深く影響が及んでいる。この段階まで進行すると、もはや表面的な対処では回復は難しく、枝元から思い切って切り戻す以外に選択肢はない。対応が遅れると、腐朽菌が主枝へと進行し、長期的に樹全体の樹勢を低下させる原因となる。
特にアボカドやマンゴーといった熱帯の果樹では、枯れ枝が炭疽病菌の付着源となりやすいが、もちろん、他の果樹でも同様だ。
枯れ枝の多い樹では、炭疽病の発生頻度が高くなる傾向があり、結果として果実品質の低下や防除コストの増加を招く。剪定の失敗が、病害のリスクを高めている例は決して少なくない。
カルスとは、剪定や傷によって露出した組織を、周囲から包み込むようにして形成される組織であり、いわば樹木にとっての「かさぶた」のような存在である。適切な位置で剪定が行われると、形成層が活発に働き、切断面の周囲から徐々にカルスが盛り上がるように形成され、最終的には傷口が閉じていく。この過程が順調に進めば、枯れ枝が残ることは少なく、腐朽菌の侵入も抑えられる。
一方で、中途半端な位置で切られた場合、形成層の働きが十分に発揮されず、カルスがうまく巻いてこない。その結果、切断面が長期間むき出しの状態となり、空気中に存在する腐朽菌や病原菌が侵入しやすくなる。いくら癒合剤を塗布したとしても、樹木自身の修復反応が適切に起こらなければ、傷口が閉じることはない。癒合剤はあくまで補助的なものであり、剪定そのものの正確さを代替するものではない。
一度枯れ込みが進行してしまうと、その部分の細胞はすでに死んでおり、後から正しい剪定を行っても回復は難しい。だからこそ、最初の剪定が重要になる。
出典:マイナビ農業
