子供の頃よく遊んだ近所の公園やグラウンドには、なぜかよくワカメが落ちていた。地元の子どもたちは「公園ワカメ」という身も蓋もない名で呼んでいた。
同じような記憶を持つ人も多いことだと思う。
調べてみると、まあ当然のことながらその物体はワカメではなかった。しかし、なんとワカメと同じように食べられることがわかった。これは試してみなければ。
結論から言ってしまおう。公園ワカメの正体は「イシクラゲ」という生物である。
ワカメのようだが海藻ではない。クラゲと名は付くがクラゲでもない。藍藻という藻類の一種で、アシツキやスイゼンジノリに近縁であり、それらと同じく食用になるというのである。本当かよ…。かなり不気味なビジュアルだったのだが。
イシクラゲってこんなの。単体だとよくわからないかもしれないが、自生している様子を見れば「ああ、あれか!」となるはず。
というわけであれがイシクラゲであると確信を得たところで、雨上がりにもう一度出直した。
あるある。グラウンドはワカメだらけだ。
一人で食べるにはこれだけあれば十分だろう。
採ろうと思えばいくらでも採れるが、とりあえず手のひらいっぱい分だけ採取して持ち帰る
色といい触感といい、ワカメそっくりだ。ただ、ワカメよりもちょっとちぢれている。
念入りに、よ~く、よおぉ~く洗ってゴミを落とす。
持ち帰ったらよく洗って砂や枯れ草などのゴミを落としてやる。これがけっこう手間なのだが、ザルを使うと多少は楽だった。
おっ、けっこうイケそう?
いざきれいに下ごしらえしてみると、あの不気味なイシクラゲも案外みずみずしくておいしそうに見えてくる。
見た目は海藻にしか見えない。よくよく見るとワカメよりも透明感があってどちらかと言うとアオサに似ている。
今回は2品の料理を作るが、もうここまで来れば調理は終わったようなものだ。
とりあえず本物のワカメに倣い、メニューはワカメを用いた定番料理であるみそ汁とわかめごはんに決めた。
素材の味がわかるよう、塩だけで味をつけたわかめ(?)ごはん。
まあ、みそ汁は火を通すからいいのだが、ごはんに混ぜ込む分のイシクラゲは生のままである。お腹を壊さないかと少しだけ心配だったが、その後も特に体調に異変はなかったので大丈夫なのだろう。
ワカメじゃなくてアオサだった
さっと火を通してみそ汁の具となったイシクラゲは鮮やかな緑が飛び、茶色っぽくなってしまった。まるで煮すぎたアオサ汁のようだ。
そういえば、Wikipediaによると沖縄ではイシクラゲをモーアーサ(芝生のアオサ)とかハタカサ(畑のアオサ)と呼ぶそうだ。僕が沖縄に住んでいた間には一度も聞いたことがなかったが…。
あれ?うまいよこれ。
アオサだ。アオサの味噌汁だ。おいしい。
食感は完全に同じ。アオサのように強い磯の香りはしないが、うっすらと海藻に似た風味がある。すっきりした味わいで食べやすい。
あの得体の知れなかった「公園ワカメ」がこんなにおいしく食べられるとは…。
みそ汁に比べて鮮やかな緑が残っている分、見た目はこちらの方がきれいだ。
あれっ!
おいしいじゃん…。生でも。
懸念していた臭みもエグみもまったく無い。非常に食べやすい味だ。
イシクラゲは薄いのでワカメほどしゃきっとした歯ごたえは無い。また、生のままでも風味が海藻よりも薄いため、「奥ゆかしいわかめごはん」といった仕上がりになっている。
ワカメが苦手な人でもこれなら食べられるかもしれない。無理をしてまでわかめごはんを食べる必要もないと思うが。
まさに陸の海藻
「落ちてるワカメ」ことイシクラゲはおいしかった。アオサやワカメの代用にできるほどに。
ただこのイシクラゲ、やっぱり見た目が悪いのは否めないので一般的には嫌われがちである。庭で繁殖してしまい、手を焼いている人も多いと聞く。そんな人は一度、駆除を兼ねて摘み取って味見をしてみるといい。「キモい謎の物体」が「晩のおかず」に化けるかもしれない。
イシクラゲごはんがおいしかったので、多めに作って翌日の弁当にした。
出典:デイリーポータル







