岩木山の麓で作られる「一町田のせり」

鍋料理や春の七草粥に使われる

 極寒の中、水に入り手作業で収穫をするセリが弘前市一町田(いっちょうだ)地区で栽培されている「一町田のせり」と呼ばれ地元で親しまれています。

「一町田のせり」が美味しいセリになる理由の一つがこの岩木山の湧水。
津軽地方は全国的にも有名な豪雪地帯で、通常水辺は大量の降雪と寒さによりすぐに凍ってしまうのですが、この地域は岩木山の湧水が常に流れてくることで、セリ田が凍らず、真冬でも収穫作業をすることができます。厳しい寒さや霜にあたることで、歯ごたえがよく香りも高いセリになります。

セリ栽培のきっかけ

「興味がある」から「やりたい」へ
もともと食べ物に興味があったという理由で、弘前大学農学生命科学部に進学した伊東さん。
大学では、農業水路や土木関係の研究をしていましたが、その研究の中、ずっと心にあったのは “食べ物に対する興味”。
休みの日は青森市浪岡出身の友人のりんご畑を手伝うなど、次第に生産者を志すようになりました。

農業法人へ就職、そして独立

大学卒業後は、青森県内の農業法人に就職し約4年後に独立。ぶどう農家として就農し弘前市一町田に住みはじめました。地元の一町田のセリ農家の方に、「セリを作ってみないか?」と声をかけられたことが切っ掛けでセリ栽培がはじまりました。

栽培のこだわり
ひと手間加える

冬の収穫時、全てのセリを収穫せず、翌年の繁殖用としてセリ田の一角を残しておきます。冬を越し、5~6月に残した一角のセリを引き抜きます。春夏の時期のセリ栽培は、食べるためのものではなく、より良いセリを育てるための、ランナー(親株)づくりなのです。

夏になるとあっという間にセリがセリ田一面に広がります。セリ田の中では、着々とランナーが大きく長く成長していきます。
ランナーの節々から伸びている茎の部分が、一般にスーパー等で売られているセリの部分です。
通常の作業では、セリ田の中で水に浸っている状態のまま、カマでランナーからセリを刈り発芽させます。

伊東さんの栽培方法は、水の中で刈るのではなく、一度ランナーごとセリ田から引き抜きます。
乾燥させないよう細心の注意を払いながら作業小屋で押切(おしきり)という道具を使ってランナーからセリを刈ります。その後、芽出しをして、セリ田に定植させています。

この方法は、伊東さんが名取市のセリ農家さんのところへ視察に行ったときに教えてもらったやり方で、より太いセリを栽培するために実施しています。

根まで食べてもらいたい思いから丁寧に洗う

セリの特に味わってもらいたい部分は根の部分。細かいところまでしっかり洗います。
「セリを買ってそのまま根っこも食べてほしいんです。少しでも土がついていると切り落としたくなりますよね」とこだわりを教えてくれました。

「毎年、栽培して、振り返って、改善して、の繰り返しです」と、伊東さんの目線はすでに来年のセリ栽培に向かっていました。

引用:Asahi

 
出典:青森のうまいものたち