“大鰐温泉もやし”
青森県津軽地方の南端に位置する大鰐町(おおわにまち)。豊かな山々に囲まれ、津軽藩の奥座敷として約800年前から親しまれてきた由緒ある温泉郷。
そんな津軽の温泉郷で代々受け継がれ、幻の伝統野菜と謳われる食材がある。「大鰐温泉もやし」だ。その名の通り、「温泉」を活かした栽培方法によって育まれる「大鰐温泉もやし」は、市場にはほとんど出回らない希少価値の高い伝統野菜として注目を浴びている。
郷土の恵みである、湧き出る温泉と温泉熱を使って栽培する「大鰐温泉もやし」。地元農家が一子相伝で密やかに受け継いできた伝統野菜だ。文献では350年以上前から栽培されていた記録が残り、津軽藩の藩主が湯治で大鰐町を訪れた際には、必ず献上された逸品と伝えられている。
温泉熱で温められた土の栄養分と温泉成分が、類をみないほど力強く美味しいもやしを育てる。長さは約40cm、噛んだ音が周囲に響き渡るほどシャキシャキな食感と歯応えは、もやしの概念を覆すほど。一束300gのもやしをわらで縛って売る慣しにも余計に食指を動かされる。
その味わいは古くから地元民に強く愛され続けてきた。11月〜5月の出荷時期になると、地元店舗に並ぶやいなや、たちどころに売り切れるのが常。現在でも出荷量の7割以上は地元で消費されてしまうのだそう。
大きな特徴は、もやしには珍しく土耕栽培であるということ。山口さんの畑には、深さ40cm、幅80cmほどに掘られた土室が5つほど並ぶ。その地底に、「小八豆(こはちまめ)」という大鰐町固有の地域在来種である大豆を蒔いて、光を遮るように薄く土を被せ育てている。農薬や化学肥料は一切使わない。また、栽培過程では水道水を一切使わず、温泉水のみを利用。収穫後の土を落とす洗い水にも温泉水を利用しているという。
栽培方法が一子相伝で、農家の直系にしか伝授されないため、後継者のいない農家は廃業せざるをえない状況が続き、ピーク時は約30軒あった温泉もやしの生産者は、片手で数えるほどまでに減ってしまっていた。そこで町は、「大鰐温泉もやし」の伝統を絶やさず、更なるブランド化を計るため、10数年前から議論を重ねた。そして、町が主体となって直系以外の人間にも栽培方法が伝授されるよう調整し、「大鰐温泉もやし」の後継者を育成することを決定したのだ。
人気メニューの一つが、「大鰐温泉もやしうまか丼」。温泉もやしがご飯の表面を覆い尽くし、町内で育った青森シャモロックのひき肉と温泉卵を混ぜながら口に運べば、もやしのシャキシャキ感と肉のコクが絡み合う絶品だ。
より一層温泉もやしの素材感を味わいたい場合は、「温泉もやし しゃぶしゃぶ」もオススメ。お湯にサッともやしをくぐらせて、ポン酢を付けて食べれば、食感といい風味といい、温泉もやしの真価をダイレクトに堪能できる。
温泉郷の恵みがもたらしてくれた、一子相伝の伝統の温泉もやし。
もやしと聞いて侮るなかれ。ぜひ大鰐町まで足を運び、その驚きの食感を実際に味わってみてはいかがだろうか。
出典:SHUN GATE

