雪解けとともに春まだ浅い美山の里に、蕗の薹(ふきのとう)が顔を出す。春の訪れを告げる山菜である。食用として人気の蕗の花茎で、つぼみや開きかけのものが一番美味しいそうだ。
雪が解け始めると、庭先や裏山に、実に多種多様な山菜が出てくるという。まずは2月下旬のふきのとうから、こごみ、雪の下、土筆、タラの芽、よもぎ、わらび、ぜんまい、うど、蕗、お茶の新芽、柿の葉の新芽などへと続き、5月ゴールデンウィークの頃まで10種類以上の山菜を楽しむことができる。レオさんは、毎年庭を見続けていているうちに、この時期のこのあたりにはふきのとう、こちらにはよもぎ……というように、出てくる場所が分かるようになったそうだ。そして、「ゆるり」のお料理には、その時々に採れる山菜が並ぶのである。都会のお店では、日本各地から集まった山菜が一斉に並ぶが、美山では、それぞれの山菜を野山から出てきた一番美味しいタイミングで食べることができるのだ。
さて、採ってきた山菜はどのように食べるのが一番美味しいのか?――「やはり、天ぷらがお薦めやねえ!」と笑顔で答えてくれた。山菜の苦みが苦手な人も、天ぷらにするとその苦みは和らぐそうだ。
天ぷらには、「抹茶塩」が定番であるが、「ゆるり」のメニューには、“かや塩”とあった。“かや塩”は、琵琶湖の葦の新芽をパウダーにして、塩とブレンドしたものだそうだ。奥さんのゆりさんが生まれ育った滋賀県彦根市の食材とコラボして、茅葺きのお店で提供するから“かや塩”と彼女が命名した。一口いただくと、お茶の葉とは異なる爽やかな緑葉の香り。桜の季節には、“さくら塩”もあるそうだ。
また、取材中にレオさんが出してくれたのは、「ふきのとう味噌」。スプーンで一口いただいてみる。湯がいた蕗の薹を細かく刻んでゴマ油で炒めたあと、味噌、さとう、みりん、酒を入れてゆっくり煮つめていく。冷めると少し固くなるので、ちょっとゆるいめくらいで火を止めて出来上がりだそうだ。ふろふき大根には甘い大根にほろ苦い「ふきのとう味噌」が実によくあう。お酒のあてや冷やっこにも是非。もちろん、白ご飯のお供にもぴったりである。3月頃から道の駅にもさまざまな山菜が並ぶので、購入した方はぜひ試してみて!
山菜採りは、今やレジャーのようにもなっているが、その歴史は古く、万葉集や古今集にも数多く詠まれている。
「君がため 春の野に出で 若菜摘む 我が衣手に 雪は降りつつ」 光孝天皇(百人一首)
この歌は、大切な人のために、雪が降る春の野に出て若菜(山菜)を摘んでいる情景を詠んだもの。山菜は、平安の昔から新春に食べると邪気を払い、病気を退散させるとされていたのである。お正月の七草粥は、この若菜摘みに由来する慣例的な行事だ。
「せり なずな ごぎょう はこべら ほとけのざ すずな すずしろ これぞ七草」
というように、七草を覚えるのに便利な短歌もある。蕪(すずな)や大根(すずしろ)などの野菜もあるが、ごぎょう(おぎょう・母子草)、はこべら(はこべ)、ほとけのざ(仏の座・三階草)は山菜の一種である。
あちらこちらで山菜を目にすることができるが、やはり山菜採りにはルールがある。当然、他人の土地に入ってはいけない。また、山菜の中には、毒があって、食べられないものもあるのでご注意を! 早春の味ふきのとうの根っこ部分にも毒があるので気を付けなければならない。「知らない野草・山菜は採らない、食べない!」が鉄則である。また、山の中には、イノシシやクマなど獣が出没する場合がある。初心者は一人では山に入らない、最初は山菜をよく知る人と一緒かお店の案内で行こう。
参照:美山ナビ

