県内の山は山菜の宝庫。早春から多彩に食卓を豊かにしてくれるが、旬は時季が限られる。保存もできるが乾燥や戻して調理するには手間がかかる。あの鮮烈な香りをいつでも簡単に味わえないか。そんな思いを募らせた南砺市利賀村地域で画期的な試みが始まっている。瞬間冷凍でおいしさをそのまま閉じ込め、解凍すれば手軽に味わえるようにするという。驚きの挑戦を取材した。 (中島健二)
最新技術を使ったこの取り組みを進めているのは、南砺市商工会利賀村事務所や特産品生産者らでつくる任意団体「利賀山菜の郷(さと)」。スタッフの須河紗也子さんと長岡悟さんが、まず案内してくれたのは利賀村坂上地区の高齢者生産活動センター。ここにある機械で山菜を真空パックする。
この日は採れたばかりのゼンマイやコゴミ、タラノメなど数種類。適量に分けてパック詰めしたものを別の場所にある零下五〇度に冷やすことができる急速冷凍機で三十分ほど冷やすと完成だ。「瞬間冷凍だと中の細胞が壊れないので香りと風味、色もそのまま保存できる」と須河さん。
利賀の山菜はこれまで生鮮食品として宅配便で発送してきた。さらに手間がかかる瞬間冷凍を導入したのには深刻な事情があった。
「ここでは山菜料理が継承されてきたが、高齢化し若い人が受け継がなくなってきた。時間も手間もかかるから。瞬間冷凍なら解凍してすぐ出せる。となると山菜がよく使われるし、自分で採って料理もしようという人が出てくる」と商工会利賀村事務所の齊藤嘉久所長。まずは担い手を増やすことが狙いだという。
とりあえず昨年、ゆでたり味付けしたりしてからの瞬間冷凍を試してみた。今年は生のまま冷凍してみたら上々に仕上がったことから本格化することにした。
十五種類の山菜を二十袋ずつ計三百袋作り、山菜が採れなくなる夏以降に詰め合わせギフトとして売り出す計画。齊藤さんは「山菜を採る人が増えて収穫量が増加したら、少しずつでも販路が広がる。利賀の食の魅力を発信できる」と考えている。
春になればたっぷり山菜が採れるという南砺市利賀村地域だが、最近は高齢化で山へ入る人が少なくなったという。そんな利賀の坂上地区を4月末に訪ねた。
ここには山菜採りの名人がいるという。なんと88歳の米倉みつ子さん。すいすいと斜面を登る身軽さに見とれていたら、もっと驚いた。家の裏に普通に山菜が出ていた。
この時季はゼンマイ。摘んですぐにゆでたものをむしろに載せ、天日干しにする。1日に何度も手でもんで茶色くなるまで乾燥させればちゃんとした保存食材になる。食べる時には水で戻す。聞いてはいたが想像以上に手間がかかる。
子どもの時から山菜を採ってきたという米倉さん。山菜を食べてきたのが健康の秘訣(ひけつ)の一つという。
「この村にいて、きれいな水と空気と、自然のものを食べること。体にいいのではないか」と思っている。
横の畑にはギョウジャニンニクが栽培されている。化学肥料などは使わない。脇になっていたアスパラを1本、いただいて食べた。甘く、自然の香りにうっとりさせられた。
出典:中日新聞

