フツウじゃないけど、よく育つ!超裏ワザ

古くからの言い伝えや野菜の生態
原産地の環境などをヒントに

 原産地の環境などをヒントに、一般的な栽培法にとらわれない独創的なやり方で品質、収量アップを実現する。塩ビ管でスイカを育てたり、サツマイモのつるを埋めたり。趣味の家庭菜園だからこそやってみたい驚きのユニーク栽培術。
 

 ネギに海水をかけたり、ジャガイモからかきとった芽を植えてみたり、スイカを塩ビ管で育てたりといったようなことをしている。突拍子もない栽培法ばかりだが、それでちゃんと野菜が育つどころか、ときに予想を超える生育を見せてくれることもあるのだ。今も続いているこの連載は、私自身面白がってやっている。

— トマトのアンデス栽培 —

 そんな実験のひとつに「トマトのアンデス栽培」がある。
 トマトの原産地は南米のアンデス山脈だ。主に西海岸沿いのエクアドルからチリ北部に至る狭長な山岳地帯に分布し、標高3000メートルほどの高地にまで生息しているという。アンデス山脈から吹き降ろす冷風と南極海に端を発するフンボルト海流の影響で気候は比較的涼しい。雨はほとんど降らず、大地は大小の石が混じった痩せた土地で、そこには今もトマトの野生種が生息している。本来トマトはそういう環境で育つ作物なのだ。

 では、そんな環境を完璧な雨よけと小石の山で家庭菜園に再現してトマトを育ててみたらどうだろうか? もしかしたら普通に栽培するよりよく育つのではないか。それを実際にやってみたのだ。

 まず、大きな石を並べて直径2メートルほどの円を作り、スコップ2杯の堆肥(たいひ)と土を高さ約20センチまで入れる。さらに大小の石を厚く積み上げて、最終的な山の高さは約70センチにした。山を高くすることで水はけをよくし、乾燥した状態を再現できるのだ。
 高さ2メートル70センチの雨よけで山全体を覆う。苗は中玉の「フルティカ」(タキイ種苗)をひとつの山に株間50センチで3株植え付け、わき芽はかきとって主枝1本で育てた。

 その結果を簡単に報告すると、普通に栽培した株に比べ、アンデス栽培は秋に入ってからの生育がよく、12月下旬に強い霜が降りるまで収穫し続けることができた。
果房の数は普通栽培が22だったのに対し、アンデス栽培は27。最高糖度は7.7度を示し、平均糖度では普通栽培の6.3度に比べて0.5度高い6.8度を示した。
 というように、果房の数、収穫期間の長さ、糖度、食味などの点でアンデス栽培はじつに良好な結果を示したのだ。

— スイカの塩ビ管栽培 —

 原産地をヒントにした栽培法では、「スイカの塩ビ管栽培」というのもやった。
 スイカの原産地はアフリカ南部のカラハリ砂漠だ。水はけのいい砂質土壌と雨の少ない乾燥した気候を好み、生育には高温と強い光が欠かせない。乾燥した大地に対応するために根を深く伸ばして、地中に蓄えられた水分を吸収している。

 そんなカラハリ砂漠に比べると日本はずっと雨が多く、根を深く伸ばさなくても十分な水分と養分を得られるので、土壌の浅い位置に根を横に広げるのだ。そうなると地表付近に多く生息する病原菌の影響を受けやすく、乾燥にも弱くなる。そこで、根を深く張らせて強靭(きょうじん)に育てるため、塩ビ管(塩化ビニール管)を利用してみた。

 実験では長さ1メートル前後の塩ビ管を畑に立ち上げ、その中に砂と培養土を1:1で混ぜてスイカの種をまいた。塩ビ管は20~30センチほど埋めると安定する。根を深く伸ばすため、栽培は苗からではなく種を直まきする。親づるが5~10節に成長した段階で摘心し、子づるは放任した。5月中旬に種をまき、8月中旬から下旬にかけて次々と立派な実が収穫できた。
 すべての果実を収穫したあとに根を掘り上げると根の長さは2メートル近くあり、塩ビ管の下端を過ぎてからも、さらに地中に向かってまっすぐ伸びていた。狙い通り深く根を張らせることができたが、この違いは生育後半の株の勢いに表れた。

 普通栽培の株が急性萎凋(いちょう)病と思われる病気で急に枯れてしまったのに対し、塩ビ管栽培は最後まで株が元気だったのだ。根を掘り上げたときも、小さな実がまだまだついていた。
 萎凋病は生理障害や病原菌によるもので、着果後に株の負担が増すことで発生しやすくなるが、植物体が健康で負担に耐えることができれば被害は抑えられる。そのためには強い根を育てることが大切なのだ。塩ビ管と砂による疑似砂漠がそれを実現したのである。

— サツマイモの直線仕立て —

 もうひとつ面白栽培を紹介しよう。「サツマイモの直線仕立て」である。

 地上のつるから発生する不定根は、なぜ肥大しないのだろうか? それは、土に埋まっていないからではないだろうか。成長するつるを埋めていったら不定根が肥大して、そこにイモがつくのではないか。この仮説を確かめるため、サツマイモのつるを成長に合わせて埋めてみた。

 収穫は10月中旬。埋めたつるを掘り上げると、予想した通りの結果になった。各節から発生した不定根は、大小あるもののしっかりと太ってイモになり、1本のつる苗からなんと90個ものイモがとれたのである。

 
出典:マイナビ農業