小さなアリは、数の力の凄まじさを見せつけてくれます。梅雨の頃になるとトビイロケアリが巣を移動をするための行列を見かけます。何匹いるのか数えきれません。しかも大多数の種は肉食性で攻撃的です。このためアリは植物と直接の利害関係はないものの、相互にかかわる仕組みを持っています。
ひとつは、植物から蜜をもらう代わりに、植物を食べる昆虫などを追い払う役割です。花粉を運搬する代償の蜜ではなく、若い葉や茎にある花外蜜腺という蜜源を守るため、結果として植食性の昆虫を追い払うことになります。
2つ目は、植物の汁を吸うアブラムの甘い尿をなめるアリが、アブラムシを捕食する昆虫等を撃退することです。直接的には植物に被害を与えることになりますが、植食性の昆虫を追い払うことにもなり、全くの加害者ではなくなります。
さらに種子の散布にも一役買うように植物との協定が作られています。これもギブ&テイクの関係です。次の項で解説するエライオソームは、カタクリやスミレなど多くの植物が利用しています。
ケシ科のムラサキケマンは、全体に強い毒を含む春の花ですが、ほとんど気にかけられていません。赤紫色の筒状の花が群がって咲く有様から寺の本堂の装飾である「華鬘(ケマン)」を連想したものです。花後はマメに似た莢を付けます。4月に花が咲いていた場所を覚えておいてください。
1ヶ月後、この莢に触ってみましょう。一瞬ではじけて莢はラセンを巻きます。中の種子は遠くへ飛ばされています。さらに種子を逃がさないようにして手にし、観察してみましょう。黒い種子に白いものが付着しています。この白いものがエライオソームと呼ばれる脂質や糖分を含んだ物質でアリが好みます。アリはエライオソームの付いた種子を巣に運んでエライオソームをべた後、種子部分を捨てるのです。結果として遠くに種子を運搬したことになります。
このように2種類の方法で種子散布をおこなうムラサキケマンは、餌を提供してアリをうまく利用しています。
出典:ウチ吹山ウォッチング

