「新大コシヒカリ」は、当時農学部に所属していた社会連携推進機構の三ツ井敏明特任教授らを中心とした研究グループが開発した全国的にも珍しい、大学が開発したコメの新品種の名称です。コシヒカリのおいしさは そのままに、一般的なコシヒカリと比べて高温耐性を持つことから、2020年に「コシヒカリ新潟大学NU1 号」として新品種登録(登録番号:第27856号)されました。
全国でも有数のコメどころ新潟では、近年の猛暑の影響でブランドである「コシヒカリ」が収量の減少やコメ が白く濁ってしまう"白濁化"といった品質低下の被害が県内全体で発生し、地域産業全体に影響を与えています。 こうした状況の中で、”コメどころ新潟のコシヒカリを守りたい”という想いから、新潟大学・刈羽村先端農業 バイオ研究センター(KAAB)の研究グループは、2005年から約20年近い歳月をかけて、この課題の解決に向けて取組みました。当初三ツ井特任教授は「高温によりコメが白く濁るのはなぜなのか」という学術的興味から研究を開始しましたが、研究を進める中で多くの農家の方が被害を受けている状況に直面し、次第に新潟に貢献できるコメを開発したいという考えに変わっていったそうです。
研究の結果、研究グループらは、イネのうちコメとなる部分に含まれるデンプンの合成と分解のバランスに着目し、そのバランス異常がコメの白濁化といった品質低下の原因となっていることを突き止めました。
そして遺伝子組換えではなく、イネが本来もつ環境適応力を引き出すことによって、暑さに強く高温耐性を有する新品種「新大コシヒカリ」の開発に成功しました。
新大コシヒカリの実証栽培は2020年より、村上市、阿賀町、新発田市、刈羽村、柏崎市、南魚沼市、上越市の 県内7市町村で開始しました。
2020~2023年における実証栽培では、一般的なコシヒカリに比べて高温被害粒の比率が低いことが実証でき、特に2021年、2022年は品質において最高水準評価を獲得できました。この結果は、新大コシヒカリが暑さに強いだけでなく、おいしく粒の美しいコシヒカリとして認定されたことになります。
2023年からは、新潟市、三条市、十日町市、妙高市、佐渡市を加えた県内12市町村で実証栽培を行いまし た。特にその年の夏は平均気温が30℃を超える記録的な高温や少雨による渇水が県内各地で発生し、極めて厳しい稲作環境での実証となりましたが、一般的なコシヒカリに比べて良好な品質となりました。
2025年現在、乾燥やその他の環境ストレスに対する耐性の検証を進めるべく、コメ共創IPの取組に賛同いただいている農家、企業、自治体などに協力いただきながら県内17市町村の約8ヘクタール(東京ドーム1.7個分もの広さ)の水田で実証栽培を進めています。
実証を続ける中で、新大コシヒカリには高温耐性だけでなく、乾燥や冠水といった環境ストレスにも耐性を有している可能性が示唆されています。
今後はさらに塩害などに対する耐性についても検証を進めることで、マルチストレス耐性を有する品種へ進化させていくことを目指しています。
そのために、最適な中干し期間の検証や有用なバイオスティミュラントなど、新大コシヒカリの能力を引き出す栽培技術を開発することで、温室効果ガス削減および生物多様性保全に貢献する環境にやさしいコメづくりを推進していきます。
出典:note

