国産キングサーモンの完全養殖に初成功、北海道大学

「親から子、子から孫」まで人工的に育てた“完全養殖”

 北海道大学大学院 水産科学研究院はこのほど、「国産キングサーモン」の完全養殖に日本で初めて成功したと発表しました。

 これにより、国産キングサーモンの養殖に向けた種苗生産が可能になり、養殖に適したキングサーモンの育種を行うことができるようになります。

 この成果は、2025年10月17日に函館市経済建設常任委員会にて報告されました。

 近年、日本の水産業は大きな岐路に立たされています。

 イカやサケ、天然コンブなど、おなじみの魚介類が記録的な不漁に見舞われ、天然資源に頼った漁業経営が成り立たなくなりつつあるのです。

 そのため、持続可能な「つくり育てる漁業」として、人工的に魚を生産する“養殖”が強く求められています。

 サーモン類は、日本人の「お刺身好き」を支える重要な養殖対象ですが、実は国内で食べられているサーモンの多くは「ニジマス(トラウトサーモン)」や「アトランティックサーモン」といった、食用に改良された“近縁種”です。

 一方で、本物の「キングサーモン」は、サケ科最大級の巨体と上質な脂、深い旨味で世界中のグルメを唸らせる高級魚。

 しかし、国内でキングサーモンの卵や幼魚を安定して手に入れる方法がなかったため、日本では“幻の魚”のままでした。

 その現状を打開し、国産キングサーモンのブランド化を目指して立ち上がったのが今回のプロジェクトです。

 具体的には、函館沿岸でごくまれに捕獲される天然キングサーモンに着目し、その卵と精子から「人工種苗(人工的に生まれた子魚)」を作り出すという壮大なチャレンジが始まりました。

完全養殖に成功!
 研究グループはまず、2022年に函館沿岸で定置網にかかったキングサーモンを確保し、その卵と精子を使って人工授精を行い、初代の人工種苗を作成しました。

 この子魚たちは、函館市国際水産・海洋総合研究センターや北海道大学の淡水実験所で大切に育てられました。

 ところが、オスのキングサーモンは比較的早く成熟する一方、メスは成熟まで3年近くかかります。

 2024年にはオス親魚の精子を得ることができましたが、肝心のメス親魚が成熟せず「次世代」を作り出すことはできませんでした。

 チームはそこから1年、飼育環境や餌、光の管理など細心の注意を払いながら待ち続けました。

 そしてついに2025年7月下旬から8月上旬、初代の人工種苗から育ったメス16個体が成熟し、卵約2万6000粒が採取されました。

 同時期にオス36個体の精子も得られ、改めて人工授精が行われたのです。

 受精卵は順調に発生し、胚の発達が進む「発眼卵」まで到達したのが約1万1000粒。

 2025年9月からは孵化が始まり、最終的に約9000尾もの国産キングサーモンの稚魚が誕生しました。

 これにより、日本初となる「親から子、子から孫」まで人工的に育てた“完全養殖”のキングサーモンが誕生したのです。

 今後はこれらの稚魚をさらに大きく育て、有用な個体を親魚として「品種改良(育種)」を重ねていくことが可能になります。

 これによって、安定した種苗供給や、日本独自の高品質なキングサーモンのブランド化、さらには国内外の高級魚市場への新たな展開が期待されています。

 
出典:ナゾロジー