苗木屋が教える取り木の方法。   

細かい手順や成功率を上げるポイント

 取り木(とりき)とは、枝や幹の一部に発根を促し、その部分を切り離して新しい個体として育てる繁殖方法である。親株と同じ性質を持つ個体を得られることから、園芸や果樹栽培の現場では古くから用いられてきた技術である。タネを使う必要がなく、さらに挿し木での増殖が難しい樹種でも適用できる点で優れている。成木の太い枝から増やすことができ、ある程度大きい状態の苗を得られることも大きな魅力である。一方で、挿し木よりは少しコツが必要であることや、作業の手間が増えるといった側面もある。

取り木とは?

 取り木とは、植物の枝や幹の一部を親株につけたまま発根させ、その後切り離して独立した苗木として育てる増殖手法である。古くから園芸界で用いられてきた繁殖技術であり、特に果樹や観賞植物の特定の樹種では、確実な手段として高く評価されている。

 植物は幹や枝の一部に傷が生じ、内部の維管束(特に師部)の接続が切断されると、葉で作った光合成産物(炭水化物)や植物ホルモンのオーキシンなどがそこで滞留し、やがて発根するようになる。

 取り木の代表的な手法である「高取り法」では、環状剥皮という枝の外層を剥ぎ取る処理を行なって、師部を一時的に遮断し、葉で生産された光合成産物がそこに蓄積する状況を作る。これにより、不定根の形成が活発になる。取り木の成功においては、師部の遮断や、ある程度の温度と湿度、十分な酸素供給などが重要である。果樹ではいろいろなものを取り木で増やすことができ、筆者は熱帯果樹のアテモヤやアボカド、レンブ、ミルクフルーツ、リュウガン、グァバなどを増やしている。

取り木に適した時期

 取り木の成功率を左右する大きな要因のひとつが「時期」である。
 基本的には、気温が高すぎず低すぎない春の時期が適している。沖縄では台風が去った秋でも可能だ。日中の気温がだいたい25℃の状態が良い。この時期は、光合成が盛んで、枝の中を流れる炭水化物も多く、発根を促す植物ホルモン(オーキシン)も活発に働く。そのため、環状剥皮後に発根しやすい条件が整いやすい。

 逆に、真夏の猛暑期や冬の低温期は、ミズゴケ内部が高温になりすぎたり、逆に低温で根の動きが鈍くなったりして成功率が下がる。ただ、地域の気候に応じて最適な時期が異なるので、まずはいろいろな時期に試してみてほしい。

 取り木と挿し木は、どちらも母樹の枝から増殖させるクローン繁殖であり、遺伝子的には同一な個体を増やすことができるが、挿し木は植物の枝などを母樹から切り離して増やす方法である一方、取り木では枝が母樹に接続されたまま増やす方法という点で違いがある。

 挿し木は、母樹から枝を切り離して、枝の分だけ大量に、そしてあまり作業に時間をかけることなく個体を作ることが可能であるが、取り木の場合は、母樹に接続された枝を活用するため時間がかかる。ただし、挿し木よりも太い枝で増やすことができ、増やした後の苗木の成長度合いもよく、実用できるまでの期間が短い。この点は、果樹栽培の現場においても大きな利点である。

 また、取り木の場合、母樹についている枝を使うので、水分の供給もある。このため、樹種によっては、挿し木では乾燥しやすく枯れてしまうものでも、取り木で増やすことが可能なものもある。

 
出典:マイナビ農業