ひのきを選ぶと、自然とつながる山が元気になる?

「植物は「会話」している、ストレスで超音波を出すことも判明」

 わたしは20年前に木材業界へ入り、山に通い、市場で木を見続けるうちに気づいたのです。
 木を使うことは、山を壊すことではありません。
 むしろ、木を正しく使うことこそが、山を守るために必要な営みなのです。

 ひのきも例外ではありません。
 特に「とあるひのき」のように、きちんと管理された山で育てられた木は、人が手を入れなければ荒れてしまい森のバランスを保てなくなる存在でもあるんです。

 ひのきを暮らしに取り入れることが、実は自然環境や地域社会にとって、大きな役割を果たしている。
 今日は、そんな「やさしい循環」の話をさせてください。

— 人が山に入らなくなったことで、山が壊れていく —

 私が木材業界に入ったころ、まだ市場には製材所や材木店の社長らが出入りし、木の声を聞く人たちがたくさんいました。

 ところが近年、林業の担い手は激減しています。
 高齢化、人手不足、収益性の低下。
 誰も入らなくなった山は、間伐が行き届かず、山に太陽のヒカリが差し込まなくなり、木々は痩せ細り、土は流れていき、動物も生きづらくなっていきます。

 本来、森は循環する場所です。
 伐って、使って、植えて、育てる。
 この循環が止まると、山はただの放置された空間になってしまいます。

「木を伐ること=悪いこと」という印象が先行しがちですが、実際には、必要な時期に適切に伐り、使うことが森の健康を守ることにつながるのです。

 まな板ひとつ、小物ひとつ小さな選択かもしれません。
 けれど、そのひとつひとつが、遠くの山の手入れを支えることになるのです。

 自然に還るような、穏やかな時間。
 深くて、静かな呼吸。
 そして、自然の中で暮らしているような安心感。

 それが、ひのきのある暮らしが生み出す空間の力です。
 私がセリの現場で木に触れるたびに感じる「人に寄り添う木」たちは、暮らしのなかでこそ、本来の力を発揮してくれます。
 自分のために、自然のために、選択できることがある。

 ひのきは、暮らしをやわらかくしてくれます。
 香り、質感、佇まい。どれも強く主張しすぎず、けれど確かに心に触れてくる、不思議な存在です。

 
出典:マイベストプロ