「農作物が革になる」といっても、葉っぱや皮をそのまま貼り合わせて使うわけではありません。現状は、一度粉のような状態にしてから加工するのが一般的です。
国内の事例を元に、具体的な製造工程を見てみましょう。
長野県で開発された「リンゴレザー(りんごレザレット)」の場合、原料となるのはジュースやシードルを作る際に出る「搾りかす」です。
まず水分を含んだ搾りかすを乾燥させ、細かく粉末化します。次にこの粉末をつなぎとなる樹脂(ポリウレタンなど)に練り込み加工。この工程により、リンゴの繊維を含んだ革のような素材が出来上がります。
これまでの一般的な合皮は、石油由来の樹脂が主成分でした。対してヴィーガンレザーは、植物由来の原料に置き換えることで、石油の使用量を抑えたエコな素材を実現しています。
農家に期待できるメリットは、これまでお金をかけて処理していた廃棄コストを削減でき、さらに新たな価値を生み出せるという点です。
ジュース加工後の残りかすや、台風被害で傷ついた果実など、市場に出せない「規格外品」も、粉末にしてしまえば立派な原料になります。これにより、「育てた作物を廃棄しなければならない」という農家の心理的な負担も軽減されます。
作物をムダなく資源として生かすことは、作る責任と同時に、最後まで使い切る責任を果たすことにもつながるのです。
廃棄物が腐るのを防ぐことも、実は重要な視点です。
例えば、フィリピンのパイナップルレザーが開発された背景には、収穫後に放置されたパイナップルの葉が腐敗し、強力な温室効果を持つ「メタンガス(CO2の20倍以上の温室効果)」を発生させていたことがありました。
これらを繊維として活用することにより、単にゴミを減らすだけでなく、地球温暖化の原因を減らすことにも直結しています。
まずは海外の有名な事例から、フィリピンなどで生産されているパイナップルレザーです。
パイナップルは実を1トン収穫するたびに、約3トンもの大量の「葉」が捨てられていました。この葉には強くてしなやかな繊維が含まれています。そこに着目し、葉から繊維を取り出して革のような素材に加工する技術が開発されました。
これまでゴミとして処理されていた葉が売れるようになったことで、農家には実の売り上げにプラスして「副収入」が入るようになりました。現在では、世界80カ国以上のブランドで採用されるほど普及しています。
メキシコで開発されたサボテンレザーも注目を集めています。
原料となるウチワサボテンの特徴は、ヴィーガンレザーとしての機能性と、製造プロセスの省エネ化に直結しています。
まず製造面では、収穫した葉を機械を使わず太陽光だけで乾燥させるため、化石燃料をほとんど使いません。
水やり(灌漑)の設備も不要なため、一般的な革や作物に比べて、少ない水とエネルギーで素材化できるのが強みです。
さらに製品としての実用性も申し分ありません。サボテン由来のレザーは、傷や水分に強く、湿気を気にせず使えるタフさを備えています。
大切に使えば約10年は持つと言われており、環境に優しいだけでなく、これまでの革製品に引けを取らない品質になっています。
出典:マイナビ農業
