国産リンゴの最大産地、青森を襲った雪害は、樹体被害が過去最悪の206億円を超えた昨冬を上回る恐れが指摘されている。短期の豪雪と急な気温上昇が爆発的な破壊力を生んだ「気候変動下の新たな雪害」とされ、産地の動揺は大きい。国を挙げたメカニズム解明と対策が急がれる。
主産地の津軽地方は2月下旬、チェーンソーの音がこだましていた。雪が残る畑には、積雪の重みで真っ二つに裂けたリンゴの大樹が、鮮紅色の断裂面をさらしていた。根元から切断する作業は、何十年もかけて樹を育てた果樹農家にとって、あまりにも厳しい。
被害の把握を進めるJAの営農担当者は「予断は許さない」としながらも、「かつてないほどの被害になりそうだ」と語る。弘前市は被害の深刻さを鑑み、3月中旬に予定していた若手リンゴ農家と未来を語り合う初めての会議を急きょ無期延期にした。県も被害調査を早期に始める方向で関係機関と調整に入った。気候変動下ではこうした事態はどこでも起こりうる。国を挙げた解明を求めたい。
気象庁の観測データをグラフにすると、今冬の特徴が分かる。1月末の極めて短い期間に記録的な量の雪が降り積もった後、2月には最高気温が5月並みに上昇し、その後も気温の乱高下が続いた。一方、昨冬は雪のピークが1月と2月の計3回あったが、急激な気温の上昇はなかった。
雪は融けるにつれて水分を含んで密度を高め、重さを増す。ざらめ雪の重量は新雪の最大10倍となり、1平方メートル当たりの負荷は500キロになるという。樹の最上部付近まで雪に埋もれた場合、根元にかかる総重量は1台1トンの軽トラック数台分に相当する計算だ。いかに風雪に耐えてきた樹であってもひとたまりもなかったと考えられる。
これほどの多雪地域でリンゴを栽培する巨大産地は、世界に青森の他にはなく、雪害に強いせん定技術を編み出した先人の苦労のたまものだ。しかし、その枝作りの前提は「雪がゆっくり深く積もり、気温はゆっくり上昇する」当時の気象であって、「一気に深く積もり、一気に上がる」今回とは異なっている。
果樹は改植して収入を確保できるまで何年もかかる。しかも、経済寿命の長いリンゴは、災害時に苗木を大量に供給できる生産体制になっていない。種苗会社は「注文から最短でも1年かかる」としており、被災農家はすぐに苗木を手に入れることができない。このままでは再スタートのビジョンすら描けないのだ。
気候変動への対応は国家的な課題だ。国産リンゴの未来を左右する雪害のメカニズム解明と対策は、国を挙げて取り組まなければならない。
出典:日本農業新聞
