出典:しもきたTABIあしすと
ブランド化へ力を入れている「オコッペいもっこ」
奥戸と書いて「おこっぺ」と呼ばれる大間町の集落で、120年近くにわたり作り続けてきたジャガイモがあります。青森県が1905(明治38)年にアメリカから輸入した「バーモント・ゴールド・コイン」という品種で、県の奨励品種として県内各地で栽培されました。当時、白米が1俵で5円30銭だったのに対し、種イモ6個で3円と高価であったことから「三円薯(さんえんいも)」と呼ばれていたそうです。
戦後になってからは男爵薯やメークインが主流になり、この三円薯を作付けする農家はほとんどいなくなりますが、奥戸地区だけが作り続けてきたという経緯があります。
「なぜかといえば、ここの気候風土に合っていたんでしょうね。私はこの薯を食べて育ったようなものです。子供の頃はどこの家でも栽培し、農協へ出荷していたものでしたよ」と話すのは、生産者の田中國雄さん。
一帯の気候は6月から7月まで気温が20度を越すことは少なく、しかもヤマセという偏西風の影響が大きいのです。畑の土は黒土でサラサラして水はけが良いことが、この三円薯の栽培に適していたのではといいます。
奥戸集落のほとんどの家は半農半漁で、昭和の時代になると昆布漁が盛んになり、さらに若者はイカやマグロ漁へ移行していくなか、薯の栽培は自家消費だけになっていきます。そうした1989(平成元)年、むつ地区農業改良普及所が希少価値のある純粋の品種であることを証明。町の特産品にしようと、2013(平成25)年に振興協議会を立ち上げ、「オコッペいもっこ」と呼ばれていたこの薯のブランド化と販売に力を入れ出します。
気になる味ですが、煮えやすく茹でると粉をふき、食感はホクホクでサラッとして程よい甘みがあります。料理にはオールマイティだそうで、松原さんに言わせると、ちょっとだけ焼いた塩辛を乗せて食べるのが一番美味しいのだとか。現在、オコッペいもっこの生産部会会員数は8名。約12トンの生産量のうち田中さんと㈱あうぷの出荷が半分を占めます。10年ほど前にはイオンの「フードアルチザン(食の匠)」でも扱われるようにもなりましたが、多くの需要に応えるには生産量が足りないのだそうです。