ドローンで柑橘の農薬通年散布を実現!

出典:AGRI JOURNAL

 

ドローンの自動航行で柑橘の農薬通年散布を実現!

 ~ 過酷な柑橘の農薬散布 成功にかける苦難の道筋 ~
 柑橘栽培において、特に重労働なのが農薬散布だ。みかん畑の多くは傾斜地だからSS(スピードスプレイヤー)は使えない。複数の農業生産者が共同運営するスプリンクラーは老朽化が進み、維持管理が困難になりつつある。動噴を背負って人力で散布するのは、もはや限界に近い……。この過酷な柑橘の農薬通年散布をドローン自動航行で実現した生産者が、愛媛県宇和島にいる。

 「研究が進めば、除草剤や超高度成分肥料などを自宅で画面みながらドローン散布できる日が来るかも知れません。私は夢ではないと思っています。柑橘のドローン自動航行による通年散布は、今や現実のものとなりました。皆さんも是非、挑戦してみてください!」と平石さんは話す。

「昔から空を飛ぶものが大好きでね! 好きが高じて続けていたら、いつの間にか通年散布を実現してしまったんです」と謙遜するが、その熱意は並大抵ではない。1970年代にラジコンヘリに自作散布機を搭載して、空からの農薬散布への挑戦を開始した。新聞社やテレビ局を呼んでお披露目したが墜落……。「あれ以来、メディアの方は声を掛けても来てくれなくなりました」と笑う。

それでも平石さんは挑戦を止めなかった。農業ドローンの購入資金にするため、害獣駆除に注力。県が1尾5000円で買ってくれる狸を2年間で500尾仕留めて250万円を貯めた。そうして2016年に念願かなって手に入れたのが『MG-1』。遂にドローン散布が実現した。

「ところが『MG-1』は自動航行ができないので、まだまだラクな作業とはなりませんでした。モノレールに沿って歩きながら手動でドローンの操作をしました。小道を整備したり、緊急着陸場を幾つも作ったり……。そもそも手動は墜落の危険と隣り合わせですから精神的な負荷が酷くて、病院に通ったくらいです。黒点病に対してはドローン散布で効果がありそうだ、と手応えは感じていましたが、手動では高精度に飛行させることが難しいため、散布ムラが生じないよう常にプレッシャーがかかっていました」。

自動航行が可能な農業ドローン 挑戦を重ね通年散布を実現
 こうした挑戦を経て、遂に平石さんはドローンでの通年散布を実現した。その相棒が、今年購入したDJI『AGRAS T10』。自動航行が可能な農業ドローンである。

 「自動航行になったことで、ストレスから開放されました。また飛行=散布の精度が飛躍的に高まりました。これにより遂に、通年散布が実現したのです。柑橘農家の方には、圧倒的に効率化できる、というメリットも知って欲しいです。例えば、真夏の暑い時期で連続作業できなくても、2日あれば2haの散布が可能です。気温が低ければ1日で終了します。散布時間は、狭い圃場なら3分、広くても15分程度で完了です」。

 「平石さんが達成した通年散布は、多くの柑橘農家に可能性を示した、と言えます。例えば、今日散布するのに使った飛行ルートは、平石さんが自分で作ったんですよ。病気の出方や天候を見ながら自由に飛行ルートを変更できる。この誰でもできる使い勝手の良さが『AGRAS T10』の魅力です」。
挑戦を続け、柑橘でのドローンの活用を実現した平石さんは、「農業は本来楽しいもの」と話す。