耕作放棄地への導入作物には何があるか。

出典:Think and Grow Ricci

 

耕作放棄地への導入作物事例

 耕作が行われている一般的な畑地土壌に比べて、作物を栽培するのに最適ではないことが多い耕作放棄地ですが、そんな土壌環境でも導入可能な作物を活用することで、耕作放棄地の解消を進めることができます。

 まず、農林水産省の定義によると、耕作放棄地とは「過去1年以上作付けせず、しかもこの数年の間に再び作付けする考えのない土地」を指します。しかし、この判定には耕作者の意思や予定の確認が必要、すなわち主観的なものであり、判定するのが難しいという点があります。

さつまいも
 さつまいもは痩せた土地でも栽培が可能で、江戸時代や戦中戦後の食糧難の時代に広く栽培されてきた作物です。雑草に強く、また規格外品は焼酎や菓子などの加工品製造に用いることができ、販路を広げやすいのも強みといえます。

連作障害が発生しやすいことや、鹿やイノシシなどの野生動物による食害が発生するリスクなどの難点もありますが、耕作放棄地に導入する作物として数多くの事例がみられます。

そば

 そばも、さつまいも同様、痩せた土地でも作付可能な、比較的手間の掛からない作物として知られています。一般的に冷涼な気候を好みます。開花時の日照りが多く、昼夜の気温差が大きいほど多収の傾向があります。

ただし、開花期に雨天が続くと作柄は悪くなり、湿害を受けやすいといった短所もあります。

ブルーベリー

「果樹」の中でもブルーベリーは、痩せた土地でも栽培が可能で比較的労力が少ないこと、かつ需要があることから、耕作放棄地に導入する作物として度々取り上げられています。事例の中には、摘み取り等の農業体験への展開を行ったり、加工・販売まで取り組んでいるものもあります。

山菜類

 もともと山に自生している山菜類は、栽培に比較的手間がかからず、鳥獣害被害を受けにくいことなどから注目されています。寒冷地や狭小な土地でも栽培可能である点がメリットとしてあげられます。

地域に多く繁茂している山菜が比較的高値販売が可能なものであれば、ぜひ導入してみたい作物といえます。

マコモダケ

 農林水産省が公開する「耕作放棄地への導入作物事例」にも含まれているマコモダケは、イネ科植物「マコモ」の茎の根元が肥大化した食材です。クセがほとんどなく、柔らかい筍のような歯ざわりの食材で、中国料理によく使われています。

このマコモダケは水田や湿田でも栽培が可能で、鳥獣害の影響が少ない作物です。機械化が困難で、収穫等に労働力を必要とする点などの短所はあるものの、耕作放棄地の環境によっては導入しやすい作物といえます。また換金性が比較的高いのも魅力的です。

農林水産省が公開した富山県氷見市の事例によると、氷見市は小区画のほ場が多く、排水が悪い粘土質の土壌だったことが、かえって収穫作業の機械化が難しいマコモダケ栽培に適していたことが記されています。また日本国内においてはマイナーな食材ではあるものの、販路や単価をしっかり確保したことで、営農組織を中心とした新規生産者の増加と面積の拡大につなげています。