「雪の中は、およそ0℃で安定していて、野菜が凍って死んでしまわないようになっているのよ。野菜自身も寒さから身を守るために糖を出して凍らない様にする。だから甘くて美味しい野菜になるの」と山岸マサ子さんは話す。
雪の多い上越市では、冬場は農業が出来ないというイメージ強かった。しかし、その雪の多さを逆に利用したのがこの「雪下野菜」だ。
雪下野菜とは、夏、秋に植えて栽培した野菜を雪が降ってもそのままの状態にし、雪下で生育させる野菜等のことだ。雪の頃に収穫して雪の下に寝かせておくものもある。 積雪が多い地域の農家は、昔から冬の保存食として自家用に少しずつ作っていた。山岸さんもその1人だ。
この雪下野菜をブランド化して、広く売り出そうと考えたのが、「旬彩交流館あるるん畑」。同店では、「雪下畑の仲間たち」という名前のコーナーを作り、甘くて美味しい雪下野菜のPRに力を入れている。現在は約70名の生産者が雪下野菜作りに取り組んでいる。一昨年7月には、商標登録も取得した。現在、雪下畑の仲間たちとして販売されているのは、ネギ、大根、人参、キャベツ、白菜の5品目だ。
雪下野菜の栽培は難しく、苦労も多い。まずは、植え付けの時期だ。雪が降る前に野菜が成熟してしまうと、雪にあたる事で、全体が痛んでしまう。逆にまだ若いうちに雪に当たってしまっても小さいままで生育が止まってしまうため、播種には長年の経験が必要だ。
「雪の時期に合わせて作るのが難しいね。早く雪が降って欲しい!と思う年もあれば、もうちょっと待って!というときもあるのよ」と山岸さん。
栽培がうまくいったら、次は収穫だ。降り積もる雪を手やシャベル、時には1度除雪機などで雪をどけて、野菜を収穫する。寒い中での大変な作業だ。
一見すると畑は、真っ白で、素人が見れば、どこに何が植わっているか分からない。しかし、山岸さんは「この列はキャベツで、こっちに白菜があるわね」と雪の中を進んでいく。何の印もない雪を掘ると中から、キャベツが出てきた。外側の葉は少し痛んでしまうが、外の葉を剝ぐと、きれいなキャベツだ。
しかし、何でも雪の下に入れておけば美味しくなるという訳でもない。しっかりと栽培や管理に力を入れているからこそ、美味しい雪下野菜が出来る。山岸さんは、なるべく有機質の肥料をつかい、農薬を減らした栽培を心がけている。
「雪下野菜は苦労も多いけど、甘味が強くて本当に美味しい。だからサラダなど素材の味を生かした食べ方をして欲しい」と話す。
こうした大変な中でも頑張れるのは、直売所の生産者や消費者との繋がりが大きい。あるるん畑に雪下野菜が沢山並んでいると、「あの人、こんな雪なのに頑張っているな、自分も頑張ろう!」と思える。イベントの販売スタッフとして店頭にいると、消費者から「こないだ山岸さんの野菜買ったわよ。美味しかった、ありがとう」と言われる事もある。こうした喜びや繋がりが生き甲斐になる。
「対面での販売はとても大切なこと。自分が作った農産物に自信が持てるし、良い物を作らなきゃと思えるんですよ」。組合長になって、そのことを強く感じる事が出来る様になった。
出典:産直新聞

