出典:マイナビ農業ラボ
自家製発酵肥料の代表格「ボカシ肥」。水分量や温度、材料の配合割合など、熟練の技術がいるように思われがちなボカシ肥ですが、今回は初心者でも簡単に作ることのできる方法を紹介します。面倒な切り返し(ボカシを混ぜる作業)も必要なく、材料を混ぜ合わせて袋詰めするだけ。それでいて、肥料の効きも申し分なく、土もよくなっていく、といういいとこだらけの肥料です。
農業をはじめた頃の筆者は、「オール8」などの安い化成肥料を主体に施肥をしてきました。2年間はたいした病気もなく「農業って簡単かも!?」と勘違いするほどいいものがとれました。ところが、3年目からは毎年新顔の病気が発生するようになり、殺菌剤なしにはうまく野菜が作れなくなってしまったのです。
ボカシ肥は、様々な有機物を混ぜて作る発酵肥料です。肥効の異なる有機物が合わさっているおかげで、植物の成長と同じペースで、長くゆっくりと肥料が効きます。化成肥料を主体にしていた時と比べると、チッソの量を3分の2ほどに減らしているのに、栽培期間が3〜4カ月のものであれば元肥のみで事足ります。
肥料効果だけはありません。微生物が増えることで土が団粒化して、ホクホクになります。特にマルチ栽培では効果が明確です。
また、土壌伝染系の病気も明らかに減りました。菌の拮抗(きっこう)作用というのでしょうか。マルチの隙間からキノコが顔を出すたびに、菌が働いているんだなぁ、と嬉しくなります。
- 米ぬか:6
- 油かす:3
- 魚粉:2
- 有機石灰:1
- 水:2
混ぜる際には、トロ舟(セメントを砂や砂利と混ぜてコンクリートを作る時などに使われる容器)や、セメント用の練りくわがあれば便利ですが、家にあるものを使えばよいと思います。
米ぬか、油かす、魚粉、有機石灰。すべて同じ容器にいれます。
材料がムラなく混ざったら、水を投入。うどんやそばをつくるときのように、水分量を均一にすること、ダマをつくらないことが大事で、わが家では2回にわけて水を入れています。水を入れる前に材料がちゃんと混ざっていれば一生懸命かき混ぜる必要はありません。材料同士が水分を受け渡し合うことで、じわじわと水が浸透していきます
できたものを、使い古しの肥料袋などに詰めます。保田ボカシは空気を遮断した状態で「嫌気性発酵」させるため、このときにきっちりと空気を抜いて、ガムテープ等でしっかり密閉します。ここがとても大事です。袋のどこかが破れていたり、空気抜きできていなかったりすると、その部分だけに腐敗臭のする白い塊ができてしまいます(そこを取り除けば使えないこともありません)。
袋の状態で倉庫などに積み重ねておき、夏なら2週間、冬なら1カ月ほどで完成します。切り返しは不要で、ただ待つだけ。倉庫においても、虫なんかも発生しません。
時期はあくまでも目安です。私は、心地の良い甘い香りから、みそのような発酵臭になってくれば使いどきだと判断しています。
ただし、時間がない場合は、甘い香りの時でも使います。未発酵だと判断する人もいますが、これまでに野菜が変になったことはありません。
完成したボカシ肥は、元肥の場合は畝内に施肥しています。畝に溝を切り、まずは堆肥を投入。その上にボカシをまぶして、土で埋めます。