焼肉に寿司、ラーメンにパスタなど、飽食の時代と言われて久しい現代日本では、あらゆるものが好きな時に食べられる。
しかし、選択肢が無限にあるにもかかわらず、15年間フルーツのみを食べて生活している人物がいる。フルーツ研究家の中野瑞樹氏だ。一体なぜそんな生活を始めたのか、体にどんな変化があったのか、本人を直撃した。
水も飲まない驚きの食生活。野菜やナッツはたまに食べる
――2009年から約15年にわたって、ほぼフルーツしか食べていないそうですが、具体的にはどんな食生活なのですか?
中野瑞樹氏(以下、中野):肉や魚はもちろん食べていません。豆や芋、米やパンなどの穀物も野菜も食べていません。水やお茶も全く飲んでおらず、水分の補給もフルーツからのみですね。
――フルーツ以外は全く食べていないということですか?
中野:最初は本当にフルーツだけでした。でも、初めて1か月程で、体がものすごく塩分を欲するようになって塩を舐めはじめました。また、果実野菜(キュウリ・トマトなど)も食べています。さらに、たんぱく質の不足を補うため、ナッツ類を食べることもありますね。厳密にいうと、食事の99%以上をフルーツ中心に果実だけで賄っているということです。
――1日にだいたいどのくらいのフルーツを食べるんですか?
中野:季節や日にもよりますが、平均すると1.5~2kgくらい食べています。
フルーツは「好きでも嫌いでもなかった」
――もともと、フルーツ好きだったんですか?
中野:好きでも嫌いでもなかったです。フルーツに興味をもった2003年以前は、スーパーに買い物に行ってもフルーツを買った記憶がありません。実家からたまに送られてきたり、外食した際にデザートに出てくるようなタイミングでしか食べていませんでしたね。
――そこからなぜフルーツに興味を持つようになったんですか?
中野:学生時代、砂漠緑化の研究をしていました。当時、ある途上国での植林の事業などを間近でもた時、地元の人が国からやらされているという状況でした。そうなると、やりがいもやる気も出ないので、長続きしません。そこで、緑化を進めるには「地元住民も経済的に潤うやり方でないだろう」と思ったんです。
――儲かるかどうかですね。
中野:そうです。そんな時、ある本を読んで「フルーツは総合栄養食」だと知りました。そこで、ひらめいたんです。フルーツが体にいいことをを広く知ってもらえれば、農家の方が自発的に果樹園を増やしてくれて、ひいては地球温暖化対策にもなるんじゃないかと。
15年間、他の食べ物を食べたいと思ったことがない
――単純に“飽きる”ということはありませんでしたか?
中野:ないですね。みなさんも、水やお茶を毎日飲むと思いますが、飽きることはないですよね。私は、夏ならスイカで冬ならみかんを、水やお茶の代わりに食べているので、飽きることはないです。
――理屈上はわかりますが、私ならどうしても他のものを食べたくなってしまいそうです。
中野:実は、実験開始の前の年に3週間、“フルーツだけ生活”を試して、比較的たやすく達成できたんですね。でも、それは「3週間後には好きなものが食べられる」というゴールが見えているからできたことなんです。実際、期限を決めずに始めた時は、2日ともたずに、何度か失敗しています。
――街に出れば、いい匂いもしますし、ネットやテレビでも美味しそうな食べ物の情報ががわいて出てきますからね。
中野:そこで、この実験をはじめる直前の4か月は、死ぬまでに食べておきたいいものはないかを探して、一つずつお別れしていきました。おかげで、今回の実験を始めて15年、ラーメンもお菓子も食べたいと思ったことはないですね。
健康診断の数値はどうなったのか
――健康診断の数値などは変化しましたか?
中野:33歳でこの実験を始めて、今48歳ですが、看護師さんやお医者さんにはしばしば検査結果を褒められますね。血糖値も血圧も肝機能も正常、特に腎臓の機能がとてもいいようです。
――見た目にも、ほっそりされていますが、若々しく健康的に見えます。
中野:以前にテレビの企画で骨密度を調べてもらったことがあったんですが、同年代の男性に比べて3割も高い骨密度で驚かれました。
――糖分を多く摂ると骨が溶けると、昔はよく言われましたね。
中野:担当のお医者さんも結果を信じてくれなくて、2回計測し直しましたが、もちろん数値は同じでした。ひとつわかっていることは、温州みかんの色素に含まれる「βクリプトキサンチン」という成分が骨密度を高めるという、エビデンスがあります。なので、その影響もあるのかなと思います。
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