リンゴ省力化へ、新品種「紅つるぎ」誕生

出典:Web東奥
 

 農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)は11日、枝が横に広がらず木が筒型に成長するため、高密植栽培に適したリンゴ新品種「紅(べに)つるぎ」を開発したと発表した。摘果や収穫などの作業がしやすく省力化が期待でき、人手不足といった課題の解決につながる。今後、樹間の幅など最適な栽培手法を研究し、一般的な品種の1.5倍の収量を目指す。

 紅つるぎは中生種。全国のリンゴ産地で栽培できる。甘みと適度な酸味があり、既存品種並みに食味が優れているという。収穫後、20度以下で保存した場合の日持ちは、主要品種シナノスイートなどと同程度の5~11日。

 同機構によると開発には約30年を要した。カナダで発見された変異種と「ふじ」を交雑し、そこから得た苗木を2005年に早生種のさんさと交配。盛岡市の研究拠点で育成してきた。

 各産地では高密植化の研究が進むが、従来の品種は枝を剪定(せんてい)するなどして樹形を整える必要があった。枝が伸びにくく、木が真っすぐ育つ紅つるぎは、壁のように一列に並べて植えると作業の動線が単純になり、自動収穫機などを使った機械化に対応しやすい。農薬を散布しやすいというメリットもある。

 一方で、果実が枝に密着しているため、実全体に満遍なく色をつけるための「玉回し」はできない。

 23年8月に品種登録を出願しており、数年以内の苗木の供給開始を見込んでいる。