植物ホルモンとの出会い 道法スタイル

出典:自然栽培全国普及会

 

樹の植物ホルモンのバランスを活かした技術

椎名ガーデン

 自然栽培に出会う以前、前述のせん定にいきついたのは、農文協の「せん定を科学する」(発刊当時、弘前大学の菊池著)という本でした。そこには「せん定の方法で、樹の植物ホルモンが変わってくる」とあったのです。

 それをみて、まさに目からウロコが落ちるような心境!菊池先生にも、直接電話し植物ホルモンの働きを伺い注目するようになりました。

 植物は、新しい枝を伸ばしその先端に花芽をつけます。先端から順番に養分が貯まりますので(頂芽優勢の原理)先端ほどよい果実がなります。

 また、根で作られた植物ホルモンのジベレリンとサイトカイニンが導管を通って、新しい枝の先端に行って発芽を促し新芽が伸びます。

 そして、その新芽でオーキシンというホルモンが作られ根まで運ばれます。

 このオーキシン、根に到達して濃度が薄い時には発根し、濃度が濃くなれば発根が止まるというのです。

 ところが現代の農学では、この徒長枝を剪定してしまうので、植物は根を傷めてしまいます。結果、樹勢が弱くなり病気になりがちになります。肥料を与えてなんとか育てようとし、無理をするので病気がさらに出る。だから農薬を使わなくてはならないというのです。一般的にも、剪定で枝を切るのは全体の20%までといいます。枝を傷つけることはイコール根を傷つけることになります。

 この徒長枝をなぜ一般的に切るかといえば、徒長枝は結実しにくいことと樹形を乱すといわれているからです。

 また徒長枝を伸ばすと、樹が高くなり作業性が悪いと言われます。しかし実際には実がたわわに実り、その重みで枝が下がってくるので、作業的にも困らないと言うのです。

 これはほんの一部の話ですが、当たり前といえば、当たり前、非常識といえばあまりにも非常識な話。いかに私たちが一般的な観念に縛られて、ありのままに自然を捉えられていないかを痛感しました。

 自然栽培において、樹に残留する肥料や農薬を取り除くことが重要な課題としてあります。

 樹からなかなか、肥料や農薬が抜けていかないため、自然栽培における果樹は時間がかかると考えていました。

 しかし、道法さんの取り組むせん定では、毎年、新しく生える立ち枝を残すことができます。それによって、枝をどんどん若返らせていくことができるのです。

 立ち枝が伸び、次に実った実の重さでしなってきます。このことすら通常は立ち枝を切ってしまうので想像もできない。しかし、立ち枝は確実にしなってくる。そして翌年はそのしなった枝の上側から立ち枝が出るのです。

 他にもさまざまなことがありますが、樹の状態を健康に勢いを持って保つことができる。これにより肥毒の残った古い枝、葉を落とすことができる。下枝なども、切り払いますが、枝を枯らして落とすのにも、実は樹はものすごくエネルギーを使っています。それを人間が剪定してやることで助け、豊かに実を実らすことに樹は集中できるようになります。

 そうすると、通常、一年置きに実る年と実らない年がある「隔年結果」といわれる状態がなくなってきます。そう毎年、実るようになってくるというのです。

道法 正徳氏からのメッセージ

 広島果実連での、農業技術指導員として指導する中、今までの農法が通用しないことを経験し徹底して反対のことを行いました。その結果、植物が「N-P-K(チッソ・リン酸・カリ)ではなく植物ホルモンで成長していること、光合成より呼吸作用のほうが大切なことを学びました。
 せん定を変えれば、植物ホルモンのバランスが変わり「肥料や堆肥・農薬を施さない」農法が実現できビジネスになる。この技術を全国に広め、農業の活性化に貢献したいとの思いから、全国各地で剪定の講習会を行っています。
 今までの、常識とは逆のことを行ってきましたが、それは今のままでは農家が幸せになれない現実を目の当たりにしてきたからです。常識を疑い植物、自然を先生にして技術の研鑽をしていきましょう!