大阪のぶどう「虹の雫」

出典:マイナビ農業

 

開発断念の危機を乗り越え、50年の歳月を
経て商品化へ動き始めた大阪初オリジナル
ブドウ「虹の雫」!!

 ブドウの栽培が盛んな大阪で、初めてのオリジナル品種が誕生した。50年前に開発が始まり、原木の伐採などの危機を乗り越えて生まれたブドウ「ポンタ」だ。公募により「虹の雫(にじのしずく)」という愛称も決まり、さらなる注目を集めている。初の大阪産オリジナルブドウとして歩み始めた「虹の雫」の、これからの市場戦略とは。

隠れたブドウ王国、大阪

 一般的に農業が盛んなイメージはあまりないかもしれない大阪府だが、実は100年以上前からブドウが栽培されてきた歴史がある。令和4年度のブドウの出荷量は全国7位の3680トンにのぼる。

 主な産地は大阪府東部の柏原市や交野市、羽曳野市、太子町などだ。これらの地域は、水はけの良い斜面地で日当たりも良い土地が多く、比較的雨量が少ない地域のためブドウの栽培に適している。大阪市という大消費地が目の前にあることもあり、長年にわたってブドウが栽培され、親しまれてきた。ワイン用というよりは食用が中心で、現在はデラウェアや巨峰をはじめ、ピオーネやマスカット・ベリーA、シャインマスカットなど、さまざまな種類のブドウが生産されている。

50年前に始まった新品種の開発。

 三輪さんが所属する環農水研の前身「大阪府農林技術センター」でオリジナル品種の開発が始まったのは1973年。巨峰とブロンクスシードレスをかけ合わせた品種だ。種なしで粒の大きさは2センチほど。実が色づき始める時期の気温によって果皮色が変化する特徴がある。黄緑、黄、薄紅など、栽培時期によって色合いが大きく変わるという。

わずかに残った苗からの複製樹で復活!品種登録へ!

 最近ではシャインマスカットが大人気のブドウ市場だが、虹の雫はどのような位置付けになっていくのか。今後の展望とともに、実際に食べた時の印象についても尋ねてみた。

 虹の雫の糖度は通常でも20度、高いものでは23度になることもあるが、もともと酸味が少ない品種のため、しっかりした甘さを感じられるという。香りにも独自性があり、マスカットのようなすっきりした香りとも、巨峰のような濃厚な香りとも異なる、芳醇(ほうじゅん)でフルーティーな独特の香りを持つ。房を手にした時、実を口にした時、豊かな香りが広がるのが特徴だ。果皮の色の変化とともに、香りや味わいも少しずつ変わっていくという。時期によってさまざまな味や香りを楽しめる、奥行きの深さも魅力だ。

 大阪府内の生産者のみが栽培し、地元の直売所などでの販売が始まったばかり。新しい品種として、色合いが変化する楽しさとともに味や香りの魅力もアピールしたいが、まだ生産量そのものが少なく、広く流通させるまでには至っていない現状がある。

 開発断念の危機を乗り越え、50年もの歳月を経て商品化へ進み始めた虹の雫。
 ブドウ栽培の長い歴史を持つ大阪だが、初めてのオリジナル品種ということで注目度は高い。