「白神の乳酸菌」で肝機能改善、弘大などが特許

出典:Web東奥

 

原生的なブナ天然林が世界最大級の規模で分布

 白神山地(しらかみさんち)は、青森県から秋田県にまたがる山地帯の総称。 屋久島とならんで1993年(平成5年)12月、日本で初めてのユネスコ世界遺産(自然遺産)に登録された。
 世界自然遺産・白神山地に自生する樹木「キハダ」から分離した乳酸菌が、動物実験で肝機能改善などの機能性が確認されたとして、共同研究する弘前大学と化粧品などを製造するラビプレ(青森県弘前市)が特許を取得した。人への機能性について同大医学部などと研究を続け、本年度からこの乳酸菌を使った食品や化粧品の販売を開始する予定。22日、弘大が発表した。

 この乳酸菌は2017年、殿内暁夫・弘大農学生命科学部教授が弘大の白神自然観察園(西目屋村)で発見し、「白神の森乳酸菌®L8菌株」(L8菌株)と名付けた。殿内教授は木の枝を羊の乳に浸してヨーグルトを作る北欧の伝統的な製法にヒントを得て、300種以上の植物を対象に実験を続け、キハダの葉から乳酸菌を分離した。人間や動物の体内に多い乳酸菌が植物から見つかるのはまれという。

 研究では同学部の前多(まえだ)隼人准教授らがL8菌株を高脂肪食とともにマウスに投与。肥満に関する予防作用を調べた。高カロリーの食事は肝臓脂質の蓄積で肝臓の炎症を促す。しかし炎症の指標である血液の値を測定した結果、L8菌株を投与したグループは与えないグループより低かった。L8菌株の摂取は肝臓の炎症を予防する働きがあることが示唆された。

 20年7月、動物実験での肝機能改善作用などについて特許を申請、今年6月に特許取得となった。

 殿内教授は「自分が見つけたL8菌株が商品化へのめどが立ちうれしい」、前多准教授は「今後は地元企業に活用してほしい」と語った。

 商品開発に関わるラビプレの三浦和英社長は「パンやリンゴジュースなどに活用して商品化していく。手に取りやすいお菓子や麺、ヨーグルトなども予定している」と述べた。

 商品の売り上げの一部は、白神山地の環境保全や研究支援として活用される予定。