なんと「日本の土」から「世界を救う発見」

出典:現代メディア

有用微生物の選抜は日本の得意分野

 プロ野球選手は「グラウンドにはお金が落ちている」と教えられ、土まみれになって練習する。土で成功したファイザー社も微生物ハンターを世界各地に派遣し(現在は許可が必要)、約14万サンプルの土から抗生物質を生みだす有用微生物を選抜した。その中から開発されたものに皮膚の感染症治療薬のテラマイシン軟膏(テラはラテン語で「大地」の意)がある。

 温暖湿潤な気候条件にある日本は微生物の繁殖に最適であり、土からの有用微生物の選抜はお家芸でもある。静岡県のゴルフ場周辺の土から分離された放線菌(ストレプトマイセス属)は寄生虫治療薬イベルメクチンとして途上国の人々を救い、発見した大村智はノーベル生理学・医学賞を受賞している。

 もっと時代をさかのぼれば、先人たちは土の細菌の中から納豆菌(枯草菌の一種)、カビの中から麹菌(アスペルギルス・オリゼー、アスペルギルス・ソーヤ)を見いだし、お酒や醤油の生産に利用してきた。同属のカビには猛毒(アフラトキシン)を生産する危険なものもいるが、先人たちは猛毒を作る機能を失った種を選抜した。日本で発酵文化が発展できたのも微生物の多様性の賜物だ。

 根の作る根圏、そして砂、粘土、腐植の連結した団粒構造という多様なすみかは、海や空から上陸した微生物にとっては全く新しい環境だったに違いない。大気中や水中の均質な世界と比べると、迷宮である。ここで競争と共生を含む相互作用を通して微生物の進化が起こり、土は地球上で最も微生物の多様性の高い場所となった。