出典:読売新聞オンライン
世界3大ナッツの一つとされる「ヘーゼルナッツ」を県内で広めようと、滝沢市在住の内沢啓太さん(36)が奮闘している。盛岡市の畑で育てている木から今秋に初めて実を収穫し、今後は商品開発にも取り組む。県内での本格的な栽培は極めて珍しいといい、「岩手の新たな特産品にしたい」と意気込んでいる。(冨田駿)
内沢さんは2017年に起業し、イベントなどで自家製のコーヒーを提供していたが、コロナ禍で中止に。新たな事業として作物を育てようとしていたところ、気候の似た長野県でヘーゼルナッツを栽培しているというニュースを知り、「岩手でも育てられそう」と興味を持った。
10本の苗木を購入し、21年から盛岡市内で試験的に栽培をスタート。インターネットで調べながら、毎日のように水やりをして成長を見守る傍ら、長野県の生産者を訪れて1年間の栽培スケジュールや加工方法を学んだ。
22年4月頃に同市内の畑に苗木を植えて本格的に取り組み、翌23年からは雫石町でも新たに栽培を開始。馬ふんの 堆肥たいひ と米ぬかの肥料だけを使った無農薬有機栽培により、欧州や米国系の8品種を約200本育ててきた。花は咲いても実はできなかったが、今年初めて盛岡の畑の木が結実。9月頃には数十粒の収穫にこぎ着け、「実がなるのかという不安が解消された」。
現在視野に入れるのが、実を使った商品の開発だ。収穫の実が限られることから当面は海外からの輸入品を活用する。畑の近くに整備した加工場で、殻をむいて 焙煎ばいせん した後に味付けしたり、実入りのお菓子やジェラートを作ったりする計画で、販路の開拓も進めていく。
内沢さんが植えた苗木は、当初の約50センチから高いもので2メートルを超えるほどに成長。興味を持ってくれた農家らには苗木を提供しており、県内全体では現在300本ほどが栽培されている。来年には栽培地域がさらに広がる見通しで、自身も雫石町の畑に新しい苗を植える予定だ。各地の気候に最適な品種を探しながら、1000本の育成を目指している。
内沢さんは「生産者が増えれば収穫量も多くなり、加工のチャンスが生まれる。手に取って食べることで、興味を持ってもらえたら」と話している。
ヘーゼルナッツ 芳醇ほうじゅん な香りが特徴。県林業技術センターによると、1950年頃に近縁とみられる種の苗を育てる試験が県内で行われ、「育成可能と思われる」という結論が出された。農林水産省は国内の生産量を把握しておらず、財務省の貿易統計によると、トルコや米国などから輸入している。