雑草との闘い

大自然と調和した農業を畑に生かすアイデア

 本来、雑草はその土地に生きてきた先住民のようなものです。作物を栽培したいという私達の都合で雑草たちを除去するのですが、先住民である雑草たちに心のなかで敬意をもつことが大切だと思います。作物を栽培する畑では、雑草が作物に障害になるほど大きく育っては問題なので、人による管理が大切です。作物が小さいうちは丁寧に除草し、作物の小さな芽を助けてあげます。作物がある程度育ってきたら、周りに雑草があっても作物の生育に問題をおこさなければ、ある程度雑草たちがあっても大丈夫だと思ってもよいでしょう。雑草を根っこから引き抜く方法や、根際で刈り取りその場に敷き詰めるという方法がありますが、どちらも臨機応変にその状況に応じて判断したらよいと思います。

 雑草たちが畑の土づくりの主役になることがあります。雑草の役割は大きくわけて3つあります。ひとつは土壌にある過剰な残留肥料を抜く役割です。有機、無機問わず施肥が多い畑では作物の育ちは良いですが、あわせて雑草の育ちも旺盛な傾向にあります。逆に土壌の残留過剰養分が少なくなり、土壌のバランスが整ってくると、雑草の種類が変わってきます。はじめは大きく強い雑草だったのが、やわらかい優しい雑草の種類へ変わるので、除草作業が楽になる傾向にあります。

 二つ目は、雑草が土を耕すという役割です。畑には耕盤といって、地下約30~40㎝ほどのところに堅くなった土の層ができていることあります。それは長年の機械耕起で機械が届かない層が踏み固められてできる場合と、長年の施肥によって残留した成分が蓄積されて堅く層を作ったことによります。その耕盤層は、作物の根の生育に障害になるほか、排水性が不良になる原因といわれています。雑草たちの強い根はその耕盤層に達し、堅い層を貫き砕く働きがあります。雑草たちが土を耕してくれているのです。

 そして3つ目の雑草たちの役割は、土壌の養分バランスを整えることです。残留肥料を抜く役割とは異なり、雑草が不足する養分を生み出すことがあります。 スギナが良い事例です。スギナはもともと酸性の土壌を好んで生育します。言い換えれば中性からアルカリに近い土壌にはスギナはほとんど生育していません。スギナが多く繁殖している畑をみれば、その土壌の酸度がわかります。そしてスギナの根を掘ってみると、地上部は10㎝ほどでも根は50~60㎝にも伸びています。一生懸命にスギナ取りをしている農家さんが「このスギナは、地獄草と言われていてね。取っても、取っても、どんどん増える。根っこは地中どこまでも伸びて、とり切れない。大変な草なのよ」と言っていました。まさしく雑草と戦っているのです。

 しかし、スギナの成分分析を試みると驚くべきことがあります。スギナは、ほうれん草と比較すると、カルシウムが155倍、リン、カリウムが5倍、マグネシウムが3倍と、非常に多くの成分が含まれています。注目すべきはカルシウムの含有量の多さです。そこで不思議なことに気づきます。スギナはもともと酸性土壌に多く繁殖しますが、酸性土壌は、アルカリ性を保つための成分であるカルシウムが少ない状態にあります。

 しかし、もともとカルシウムの少ない土壌からカルシウムたっぷりのスギナが生えてくるという不思議な現象がおきています。なぜでしょうか?それは土壌とスギナとの間で、元素転換が起きているといわれています。元素転換の例として鶏が有名です。鶏は毎日カルシウムたっぷりの卵を産み続けますが、実際の餌のカルシウム成分を量ると生み出される卵のカルシウム量には及ばないそうです。このように自然界では日常的に元素転換がおきているのです。

 そしてスギナは、生えてきた場所で枯れて土にかえることで、その土地にカルシウム成分を補給します。すると酸性だった土壌が、スギナのカルシウムで徐々に中性になり、土壌の成分バランスが整います。スギナは身を尽くして土壌を良くさせようとしていたのです。無肥料栽培で「土壌の酸度調整はどのようにしますか?石灰などを入れたほうが良いですか?」という質問がありますが、スギナの役割を活用すれば、人は何も考えなくても、何も入れなくても自然の力で酸度調整がなされます。こうなるとスギナは悪者でも戦う相手でもなく、良き助け役であって、歓迎したい存在になります。

 
出典:無肥料自然栽培